6月23日の日本民話
キツネの毒キノコ
青森県の民話
むかしむかし、山のふもとのある村に、娘が一人いるおじいさんとおばあさんがいました。
娘のお春(はる)はとても美人で、おじいさんはむこさん選びにたいへんです。
ある日の事、とてもいい話がまいこんできたので、娘の嫁入りが決まりました。
おじいさんは喜んで、嫁入り道具を買いに町へでかけていきました。
峠(とうげ)の道をのぼっていくと、林の中にキツネが集まって、たのしそうに歌いながらおどっています。
立ちどまって見ていると、キツネたちは、
♪美人のお春
♪嫁にもらって
♪楽しみだ
♪早くこねえかな
と、歌っているのです。
それを聞いたおじいさんは、ビックリ。
「キツネたちめ、よくもだましよったな!」
おじいさんはいそいで家にもどると、おばあさんに話をしました。
それを聞いたおばあさんも、すっかり腹をたてて、
「じいさま。キツネに豆酒(まめざけ)のませると、動けなくなるといいます。キツネたちが嫁をもらいにきたら、のましてやりましょう」
と、いって、さっそく豆酒をつくりました。
さて約束の日になると、嫁むかえのキツネたちは男前の若者に化けて、ウマまでひきつれてやってきました。
おじいさんは、
「やあやあ、遠いところをごくろうさんです。まだ娘の準備が終わっていないので、しばらく休んでくだされや」
と、あいさつをして、豆酒をのませました。
ウマには、豆酒のしぼりかすの煮豆をあたえました。
いい気持ちになって横になった男たちはいびきをかきはじめ、そしていつのまにやら、しっぽを出したり、とがった耳を出したりと、キツネの正体をあらわしはじめたのです。
「それっ、やってしまえ!」
おじいさんとおばあさんは、ねむっているキツネたちを手あたりしだいになぐりつけました。
そして家の裏につないだウマたちも、キツネの正体をあらわしていたので、これも次々にたたきのめしてしまいました。
そのとき、一匹のキツネが息をふきかえして逃げ出しました。
おじいさんがあとをつけていくと、キツネは山の巣穴(すあな)へ逃げこんで、留守番(るすばん)をしていた古ギツネに言いました。
「みんな殺されてしもうたんじゃ。おら、かたきうちをする。じじいの家の庭の木の下に生える毒キノコに化けて、娘のお春も一緒にみな殺しにしてやるわ」
それをきいた、留守番の古ギツネは、
「毒キノコに化けるというが、人間はかしこいからな。毒キノコの毒はイワシの煮干しを入れて煮たら、消えてしまうのを、知ってるかもしれんぞ」
と、いいましたが、若いキツネはききません。
(そうか、毒キノコの毒は、イワシの煮干しをいれて煮たら消えてしまうのか)
話をきいたおじいさんは、喜んで家に帰っていきました。
庭でまっていると、やがて大きなキノコが生えてきました。
おじいさんはそのキノコをとって、イワシの煮干しを入れて煮てみると、キツネが化けたキノコの毒が消えて、とてもおいしいキノコ汁になったのです。
おじいさんとおばあさんは近所の人たちをよんで、キツネのキノコ汁でたのしい宴会(えんかい)をひらいたという事です。
※ イワシの煮干しで毒が消えるのは、キツネが化けたキノコの毒だけで、本当の毒キノコの毒はイワシの煮干しを入れても消えません。
おしまい
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