9月26日の日本民話
一休さんの、サルの恩返し
滋賀県の民話
むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
その一休さんが、大人になったころのお話です。
ある年の春、一休さんが伊豆(いず)のお寺にいたとき、村の男が一匹のサルをつかまえて、家の軒下(のきした)でさんざんなぐりつけていました。
一休さんはサルをかわいそうに思って、わずかばかりのお金でサルを買いとると、山へ逃がしてやりました。
それから何日かしたある日の夕方、お寺の縁側(えんがわ)から夕焼けにそまる春の山々の景色(けしき)をながめていると、一匹のサルがやってきて、葉っぱにつつんだものをさしだしました。
一休さんはそのサルの顔を見て、このあいだのサルだと思いながら、
「これをわしにくれるというのか? ありがとう」
と、サルの手から葉っぱのつつみをうけとりました。
中にはまっ赤にうれた、野イチゴの実が入っています。
すると一休さんは、
「これはおいしそうだ。ああ、ちょっとおまち」
そういって、布袋にいりマメを入れてやると、サルはそれをうけとって、お寺の裏山へ消えていきました。
次の日、サルはその布袋においしそうなクリの実を入れて、一休さんのところへかえしにきました。
「命を助けられた恩を、よく知ったサルじゃ。善悪の区別もわからぬような人間は、サルにもおとるといえる」
一休さんはたいそう感心して、若いお坊さんたちにそう語ったという事です。
おしまい
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