きょうの日本民話
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2009年 2月28日の新作昔話
まこもが池のオシドリ
長野県の民話
むかしむかし、武田の家臣に、桜井重久(さくらいしげひさ)という武将がいました。
重久は大そう強い武将だったのですが、武田家が滅びると富県村(とみがたむら)の貝沼(かいぬま)に住みつき、名前も貝沼重久(かいぬましげひさ)と改めて暮らしていました。
ある日、重久は犬をつれて狩りに出かけました。
ちょうど、まこもが池のそばを通りかかると、池の中ほどにオシドリが二羽、仲良く浮かんでいたのです。
「これは、良い獲物だ」
重久はさっそく弓矢を放ち、一羽のオシドリの首を射貫きました。
ところがどうしたわけか、犬がくわえてきたそのオシドリには首がなかったのです。
さて、それから数日後の夕方、重久が座敷でくつろいでいると、どこからか女の悲しい歌が聞こえてきました。
♪桜井の、名もうらめしき、貝沼の
♪まこもが池に、のこるおもかげ
それは、
「桜井も貝沼という名前もうらめしい、まこもが池には、今は亡きあの方の面影がいつまでも残っております」
と、こんな意味の歌です
重久は急いで表に出てみましたが、そこには誰もおらず、ただ、田んぼの上を風が吹いているだけです。
それから一年がすぎた、ある日の事。
重久は狩りの途中で、また、まこもが池を通りかかりました。
すると今度は、めすのオシドリが一羽、池を泳いでいたのです。
重久はさっそく、弓矢を放ちました。
犬はすぐさま池にとびこむと、オシドリをくわえてもどってきました。
そして犬がくわえてきたオシドリを手にして、びっくりです。
そのめすのオシドリの羽の下には、ミイラになったおすのオシドリの首がしっかりとはさまっているではありませんか。
そのとたん重久の耳に、いつかの悲しげな女の歌がよみがえってきたのです。
「そうか、そういうことか」
重久は自分の犯した罪を深く反省して、その日から弓矢を捨てました。
そして頭を丸めて、まこもが池の近くに寺を建てると、自分が殺した二羽のオシドリの供養をしたそうです。
今も残る鴛鴦山東光寺(えんおうざんとうこうじ)が、この寺だといわれています。
おしまい
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