きょうの日本民話
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2009年 3月9日の新作昔話
永平寺(えいへいじ)の五百羅漢(ごひゃくらかん)
福井県の民話
むかし、有名な織田信長は、一向一揆(いっこういっき)の討伐(とうばつ)のために、大軍を北陸へと進めました。
そして何千という家来を永平寺にさしむけて、寺の明け渡しを命じたのです。
すると中から、禅師(ぜんし→徳の高い僧の総称)が出て来て、
「仏の道を求めて修業する者には、戦などは無縁のもの。どうぞお引きとりを」
と、深々と頭を下げました。
しかし信長の家来は、それを聞き入れません。
しかたなく禅師は、修業僧を寺から退出させる時間として半日の猶予を願い出ると、さっそくそのことを修業僧につげました。
「・・・と、いうわけだから、みな、すぐに寺を出る用意をするように」
禅師の言葉が終わったあとも、修業僧たちはだれ一人立ちあがろうとはしません。
それどころか、みんなが心をあわせたように、
「我々は死を恐れません。御仏のおそばにつかえる者としての立場を守りぬきたい!」
と、言うので、禅師は、ほとほと困り果てました。
ところが山門の外では、とても不思議な事がおこっていました。
なんと旅支度をした僧が長い長い列をつくって、山を下っているのです。
その列は夕方になっても続きます。
信長の家来たちは、僧の数の多さに驚き、そして合掌したままの姿勢で進み続ける彼らの気高い姿に心を深く打たれました。
それと同時に、力をもって仏につかえる者を追い出し、その寺を占拠しようとした自分たちが、とてもあさましく思えたのです。
信長の家来たちは、ついに包囲をといて引きあげていきました。
これは、永平寺を戦禍にまきこまないようにと、山門楼上(さんもんろうじょう)に安置されている五百羅漢(ごひゃくらかん)が修業僧に身を変えて、寺を守ってくれたといわれています。
おしまい
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