きょうの日本民話
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2009年 3月11日の新作昔話
庭はきこさじ
福井県の民話
むかしむかし、福井県の坂井郡には、『こはな』という、それはそれは可愛らしいお姫さまがいて、お殿さまはとても可愛がっていました。
ところがこのお姫さまは、お城の庭掃除の『こさじ』という若者に思いを寄せていました。
しかし二人は身分が違いすぎた為、まわりの人々に話す事さえ出来ません。
そうとは知らず、お殿さまは一の家老(かろう)の息子と縁談(えんだん)を決めてしまい、八月十五日に婚礼(こんれい)をあげるまで話を進めてしまいました。
悩んだ姫は、ついに病気になってしまいました。
殿さまはびっくりして、大勢の医者に来て見てもらいましたが、誰一人、姫の病気を治せるものがいません。
日に日に弱ってゆく姫の姿に心を痛めた殿さまは、ついに占い師を呼んでみてもらうことにしました。
すると占い師は殿さまに、
「姫さまのご病気は、ころも川のさけを食べさせると治ります」
と、言いました。
殿さまはそれを聞いて大喜びし、
《ころも川のさけをとってきた者を姫の婿とする》
と、おふれを出しました。
さっそく十数人の家来たちが、われもわれもと、ころも川に行きましたが、不思議な事にさけは一匹もとれません。
その翌日も大勢の人が挑戦しましたが、小魚一匹かからず、皆もどって来ました。
最後に、こさじがとりに行きました。
こさじは、舟に乗り川の中ほどに来ると、
♪きのもきた、けさもきた、ころもがわ
♪すそやぶれて、さけあがる
(来たと着た、鮭と裂けをかけてあります)
と、歌を一首よむと、たちまち魚が舟の中へ入ってきたのです。
さて、こさじは喜んで城へさけを届けたのですが、すでに手遅れで、姫はたった今、死んでしまったのでした。
皆がなげき悲しむなか、こさじはこんな歌をよみました。
♪しでやまか、さんずのかわか
♪こさずに、おれたら、またもどれ
(越さずにおれたらと、こさじにほれたらをかけてあります)
すると驚いた事に、姫はむくりと起き上がると、死の世界から見事戻ってきたのです。
お殿さまは大喜びです。
「おおっ、見事見事。よくぞ姫の病を治してくれた」
身分の違いはありましたが、こさじはお殿さまに気に入られて、二人はめでたく夫婦になったそうです。
おしまい
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