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2008年 5月10日の新作昔話

二匹のロバ

二匹のロバ
イソップ童話

 重い荷物を背負った二匹のロバが、首につけたすずを鳴らしながら、お金持ちのおじさんに連れて行かれました。
 一匹の方は麦の袋を三俵も積みあげていましたが、もう一匹の方は、かごを一個背負っているだけでした。
 そのかごの中には、お金がいっぱい入った袋と、指輪や宝石などの大切な宝物が入った箱が入れてありました。
 麦の袋を背負ったロバは、重いのに長い道を歩いてきたので、
「フウ、フウ・・・」
と、苦しそうな息をはきながら、とぼとぼついて行きました。
 首につけたすずも、
「リ、リ、リ・・・」
と、あまりよい音もたてませんでした。
 もう一匹のロバは、仲間のロバをばかにして、
「へん。おれの方は、大事なものを運んでいるんだぞ。お前の方は三俵も背負ってたって、たかが麦じゃないか。値打ちがちがうよ」
と、首を高くもちあげ、勇ましそうにしっぽを振り、
「力ポカポ」
と、ひづめの音も高く歩いていきました。
 首につけたすずの音も、
「♪リン、リン、リン」
と、気持ちのよいひびきをたてていました。
 二匹のロバと主人は、やがて森の中へ入っていきました。
 すると、しげった木のかげに隠れていた悪者が、刀を抜いて現れました。
 悪者は麦の入った袋などには目もくれず、お金と宝の入ったかごを取ろうとしました。
 お金持ちのおじさんも、わたしてなるものかと刀を抜いて切り合いました。
 そのため宝のかごを背負ったロバは、悪い者になぐられたり、切られたり、ひどい目にあいました。
 そしてとうとう、悪者にお金と宝を盗まれてしまったのです。
 けがをしたロバは、
「やれやれ、なんて情けないことだろう。お金や宝なんて運んだばかりに、なぐられたり、切られたり、ひどい目にあった」
と、なげきました。
 麦の袋を背負った方のロバは、
「おれは、そんな大事な物を運ばないでよかったよ。だれも、おれのことなど気にもかけてくれなかった。それで盗まれもしなきゃ、けがもしなかった」
と、喜びました。

 人から注目をあびることは、人からねたまれることにもなるのです。

おしまい

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