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2008年 8月24日の新作昔話
魔物のふろしきつつみ
むかしむかし、あるところに、力自慢の荷物担ぎの男がいました。
大きな荷物をかついでは、
「どけどけ、じゃまだ、じゃまだ」
と、街道を、わがもの顔で行き来していました。
ある日この男が、峠の茶店でひとやすみしていると、一人の旅の女が、
「その荷物、重そうですが、どのくらいおありですか?」
と、たずねかけてきました。
「ああ、ざっと、七十貫目(70かんめ→260キログラム)だ。街道には多くの荷物担ぎがとおるが、どいつもこいつも、せいぜい十五貫目がやっとさ。がはははは」
男が自慢すると、
「では、わたくしのこの手荷物くらい、なんなく持ち上げられましょうね」
女はかたわらの小さなふろしきつつみをとって、男の前に、ぽいとおきました。
「あたりまえだ。こんなもの、小指の先で十分・・・」
男はつつみに指をかけましたが、どうしたことか、びくともしません。
「ややっ。これは、どうしたことだ」
足をふんばって、両手で持ち上げようとしても、びくともしません。
すると女は、そのつつみを軽々と持ち上げて、
「ふん! 女の手荷物ひとつ持ち上げられないくせに、街道を我が物顔でのし歩くなんて、あつかましいにもほどがあるよ!」
女はそう言ったかと思うと、みるみるうちに口が耳までさけて、化け物の姿にかわりました。
そして大きな口から、まっ赤な炎をふきだしました。
「ギャーッ!」
男がはいつくばると、はげしい雨と風とかみなりがとどろいて、生きた心地がしません。
「神さま、仏さま、ご先祖さま、なにとぞ、お助けください!」
はいつくばったまま、男が手をあわせつづけると、やがて雨も風もかみなりもやみました。
そこで男がおそるおそる顔をあげたところ、さっきの旅の女は、かげも形もありません。
「これはきっと神さまが、おれの力自慢をいましめようとして、やったことにちがいない」
それからというもの、男はすっかり気持ちを入れ替えて、力自慢をしなくなったということです。
おしまい
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