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2008年 9月18日の新作昔話
桶屋の夢
宮城県の民話
むかしむかし、ある村に桶屋さんがいました。
桶屋さんは貧乏でしたが、そんな事は気にせずに、いつも歌を口ずさみながら桶を作っていました。
ある日の事、桶屋さんは村の大きな酒屋さんから、仕事を頼まれました。
酒樽のまわりを止めてあるたがが古くなったので、新しいのに変えてほしいというのです。
桶屋さんは、久しぶりの大仕事に大喜びです。
「金づち、木づち、のみに、かんな。それからそれから、あれとこれを持って・・・」
桶屋さんは仕事道具を持って、大はりきりで出かけて行きました。
さて、酒屋さんの酒蔵には、古い桶が数えきれないほど並んでいます。
桶屋さんは、
「はい次、ほい終わり、はい次、ほい終わり」
と、古いたがをはずして新しいのに代えていきました。
そして、一番最後のひとつを見てびっくり。
その樽はとても大きな大桶で、桶屋さんも今まで見たことありません。
桶屋さんははしごに登って、古いたがにのみをあてて、
「それ、はずれろ」
と、思いっきり金づちでたたきました。
そのとたん、
バーン!
いきなりたががはずれて、その拍子にたがは桶屋さんをひっかけて、ものすごい力ではじいたのです。
ビューン!
「うわぁ、助けてくれー!」
はじかれた桶屋さんは、勢いよく空へ飛ばされました。
そして桶屋さんは棒を見つけたので、必死でつかまりました。
「やれやれ」
と、思ったその場所は、なんと五重の塔のてっぺんの棒だったのです。
「うわーん、怖いよー、おろしてくれよー」
さて、それを見つけたのは、雲の上のかみなりさまです。
「ありゃ? なんでここにいるんだ。おめえは、人間だろ」
「へえ、人間の桶屋です」
「桶屋か、そりゃいい。うちへ来い」
桶屋さんはかみなりさまの家へ連れて行かれて、こわれた樽やら板のはずれた桶を山ほど目の前につまれました。
「とほほ。なんでこんな目に」
でも、雲の上ではどうしようもありません。
桶屋さんは、せっせと仕事を始めました。
そうして四、五日たつと、かみなりさまが水がめと笹の葉を持って来ました。
「おい、桶屋。今度は水まきだ。俺さまが太鼓を景気よくたたくから、人間の世界に水をまいてやれ」
そういってかみなりさまは、太鼓をたたき始めました。
桶屋さんは、言われたとおりに雲の上から水まきを始めます。
するとその水は雨になって、地上に落ちて行きました。
ドンドコ、ザーザー。
地上は大雨です。
雲の上から見ていると、人間たちがあわてて畑から飛び出していったり、洗たく物を取りこんだりと大騒ぎ。
「こりゃ、おもしろい。こりゃ、愉快だ」
桶屋さんは楽しくて調子に乗り、雲の上を走りまわって水まきをしました。
と、そのとき
「うわっ」
と、バランスを崩したと思ったとたん、桶屋さんはまっさかさまに雲から落ちてしまいました。
あまり走りまわりすぎて、はじっこの雲のうすいところに来たのに気がつかなかったのです。
「うひゃーーー!」
ドボーン!。
落ちて落ちて、落ちたところは沼でした。
桶屋さんは大暴れして、ハッと気がつきました。
気がつくと、そこはふとんの中。
おまけに、どうも冷たい思ったら、桶屋さんはおねしょをしていたのです。
おしまい
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