きょうの日本民話
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2008年 10月12日の新作昔話
大工と三毛猫
東京都の民話
むかしむかし、江戸の神田に、一人の大工がいました。
女房が死んだため、とてもさびしかったので、一匹の三毛猫を可愛がっていました。
朝は猫の一日分の食べ物を用意してから、仕事にいきます。
夕方は仕事がすむと、みやげでも買うように、猫の食べるさかなを買ってきます。
猫も主人の足音を聞くと、ちゃんと迎えに出るのでした。
ところがこの大工さん、ふとしたことから目の病気になってしまいました。
それで、医者に見てもらうと、
「いやはや、これはひどい眼病ですな。とてもわしらの力では治すことは出来ませぬ」
と、いうのです。
そんなわけで仕事は少なくなり、とても貧乏になりました。
もちろん、さかなを買って猫にやることはできません。
ある晩の事、大工は猫にむかって言いました。
「なあ、みけや。いままではお前と一緒に暮らしてきたが、おれの目もこんな事になってしもうた。もう、とても治りそうもない。暮らしも悪くなり、お前をやしなうことも出来ん。いったい、どうしたものかのう」
大工は語りかけているうちに、うとうとと、ねむってしまいました。
するとその話がわかったように、猫はふと立ちあがったかと思うと、大工の目をしきりになめはじめたのです。
右の目をなめると、今度は左の目をなめます。
それに気づいた大工は、
(変な事をするわい)
と、思いました。
ところがそれからというものは、夜となく昼となく猫は大工の目をなめくれるのです。
やがて不思議な事に、目の痛みは日ましにうすらいできました。
十日ばかりたつと目はすっかり治って、両目とも、またよく見えるようになったのです。
ところがそのころから、猫の方は目がつぶれて、ついに見えなくなってしまいました。
そしてまもなく、どこかへ姿を消してしまったのです。
目の治った大工は前にもまして腕があがり、仕事も繁盛するようになったという事です。
おしまい
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