きょうの日本民話
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2008年 10月20日の新作昔話

サルの顔はなぜ赤い

サルの顔はなぜ赤い
岡山県の民話

 むかしむかし、岡山のある山の中に、一匹のサルがすんでいました。
 サルが山からおりて、里へ遊びに出てみると、
「きょうは餅をついて、神さまにお供えしよう。そうすると、わしらはもっともっと長生きができるぞ」
と、おじいさんとおばあさんが、お餅をついていました。
 サルは木のかげで餅つきを見ながら、なんとかお餅を手に入れたいと考えました。
 ふと見ると、木の葉にアマガエルがいます。
「おい、アマガエルどん。お前、餅は食いたくねえか」
 サルがいうと、アマガエルはうなずきました。
「ゲーコ。食いたい、食いたい」
「そうか。それじゃ、わしのいうことをきけよ。餅をたくさん食わせるからな」
「ゲーコ、きく、きくぞ。どうすりゃいい」
「簡単じゃ。お前は家の裏へいって、赤ん坊の泣くまねをするんじゃ。あのじいさんとばあさんは、前から子どもを欲しがっていた。子どもの泣き声を聞くと、すぐに飛んでいくだろう。そのすきに臼(うす)ごと餅をいただいてきて、山分けすればいい」
「ゲーコ。なるほど、なるほど。それなら、赤ん坊の泣き声の、まねをしてくる」
 アマガエルは木の葉の上から飛び降りて、家の裏へはねていくと、
「ほんぎゃあー、ほんぎゃあー」
と、赤ん坊の泣きまねをはじめました。
 カエルにしては、なかなかに上手です。
「おじいさん。赤子の泣き声がしますよ」
「本当だ。だれかが、子どもをすてていったのかもしれん」
 おじいさんとおばあさんは、大急ぎで家の裏へ見にいきました。
「しめしめ。うまくいったぞ」
 サルは大喜びで木のかげからとびだすと、お餅の入った臼をかついで、おもてのやぶの中にかくれました。
 おもてのやぶの中で、サルがつきたての熱いお餅を食べていると、アマガエルがやってきました。
「ゲーコ。さあ山分けだ。わしにも食わしてくれ」
 そういって、アマガエルが臼に飛び乗ろうとすると、サルが手で追い払いました。
「ゲーコ。山分けのはず。山分けのはず」
 アマガエルは何度も臼の縁に飛び乗りますが、その度にサルが手で追い払います。
「お前なんか、あっちへいけ。この餅は、全部おれの物だ」
 サルがブンブンと手を振ると、その手の先についていた熱いお餅が臼の中からビューンと飛び出して、サルの顔にぺたりと貼り付いてしまいました。
「わあーっ、あち、あち、あちちちちちち!」
 サルは顔をやけどして、顔がまっ赤になってしまいました。
 そのときからだそうです、サルの顔が赤くなったのは。

おしまい

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