きょうの日本民話
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2008年 10月21日の新作昔話
白い竜
長野県の民話
むかしむかし、長崎にすむお坊さんが、用事で京の都まで出かけました。
その帰りに、佐賀の温泉宿に泊まりました。
お坊さんは長旅の疲れを温泉でいやし、気分がくつろいだところで、ぶらりと散歩に出ました。
宿屋のうらにある山道は、まわりにきりたった岩が多くて、なかなか景色のいいところです。
お坊さんが、ふと、がけの下に目をやると、池のようなものが見えました。
湯あがりで喉がかわいていたので、降りていったお坊さんは手ですくって水をのみました。
「うむ。これはうまい!」
とてもおいしい水なので、再び水をすくおうとすると、透明な池の底で何かが動いているように見えました。
「おや? 何だろう?」
目をこらすと、これがなんと白い竜です。
まっ白な竜が、じっと池の底にへばりついていたのです。
頭に二本のツノがあり、首の後ろには、たてがみが生えていて、それが水草のようにゆっくりゆらいでいました。
長い口ひげもあり、白銀色のうろこまでが一枚一枚はっきり見えます。
豆つぶほどの小さな目玉は開いているのですが、ピクリとも動きません。
ちょうどそのとき、がけの道をおりてくる人たちがいました。
宿屋のお客だったので、お坊さんは手まねきをすると、白竜のことを教えてやろうと声をあげました。
するとその声に驚いたのか、白竜は水にとけるように、どこかへ姿を消してしまいました。
お坊さんは宿にもどってから、さきほどのお客たちと一緒に宿屋の主人にこの話をしました。
すると主人は、こんな話をしてくれました。
「白竜の事は、わたしも子どものころから聞いております。裏の山の神ですが、これまで、だれもその姿を見た者はおりません。あの池の奥には、どのくらい広いかわからないほど大きな洞窟があるのです。白竜は、そこにいるといわれています。神の白竜をごらんになられたのですから、お坊さまは幸運でしたね」
白竜を見たこのお坊さんは、その後、白竜山人(はくりゅうさんじん)と名乗り、自分が見た白竜を絵かきにかかせて、いつも自分の部屋にかかげていたという事です。
おしまい
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