きょうの日本民話
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2008年 11月19日の新作昔話
おいつぼの滝
和歌山県の民話
むかしむかし、上神野(かみこうの)の庄屋さんが病気になったので、庄屋の娘は谷村の観音さまに毎朝お参りをして、病気の全快をいのりました。
ある晩、娘の夢の中に観音さまがあらわれて、
「山の大ザルがお前を嫁にしようとねらっているから、気をつけなさい。もし大ザルがやってきたら、水がめの中にかくれるのですよ」
と、言いました。
それから二、三日後、娘が家でごはんの用意をしていると、大きな山ザルが戸を破って入ってきました。
そこで娘はお告げの通り、そばにあった空の水がめの中にかくれました。
ところが大ザルは、すぐに娘を見つけて、水がめになわをかけると、ひょいと肩にかついで外に出ていきました。
娘は、恐ろしくてたまりません。
ためしに水がめのふたを押し上げてみると、なわがゆるんで、ふたが開きました。
外をのぞいてみると、サルは川のふちを歩いています。
そこで娘は名案を思いつき、頭にさしてあるカンザシを抜くと川の中にほうり込んで、サルにむかって言いました。
「わたしの大事なカンザシが川に落ちてしまったわ。あのカンザシをひろってくれたら、何でも言うことを聞いてあげるよ」
サルは大喜びで、水がめをかついだまま川の中へ飛び込もうとしたので、娘は、
「わたしをかついだままでは重すぎるわ。わたしはここで待っているから、早くひろってきて」
と、いって、水がめから飛び出しました。
サルは空の水がめを背負ったまま川の中へ飛び込んだので、水がかめの中へ流れ込んで、そのまま滝つぼの底に消えてしまいました。
娘は観音さまに感謝して、その後も毎朝、観音さまにお参りしました。
すると数日後には、庄屋さんの病気はすっかりなおったのです。
大ザルがおぼれ死んだあの滝は、その後『おいつぼの滝』と呼ばれているそうです。
おしまい
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