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2008年 12月14日の新作昔話

かくれ蓑(みの)

かくれ蓑(みの)
山口県の民話

 桃太郎が鬼ヶ島から持ち帰った宝物の中に、かくれ蓑(みの)というものがありました。
 このかくれ蓑、見かけはボロボロで汚れていますが、それを着るとたちまち体が消えて見えなくなってしまうという不思議な宝物です。
 さてある晩のこと、一人の盗人が桃太郎の家へ忍び込み、かくれ蓑を盗み出しました。
「よし、こいつを俺の商売に利用してやろう」
 それからは、盗人の仕事はおもしろいほどはかどります。
 どこへ泥棒にはいっても、かくれ蓑を着ているおかげで誰にも見つかることはありません。
 ところがある日、盗人の留守に納屋でかくれ蓑を見つけた盗人のおばあさんは、
「なんだ、この汚い物は」
と、かくれ蓑を焼いてしまったのです。
 帰ってきた盗人はがっかりです。
 でも、あきらめきれずにいろいろ考えた結果、裸になって体中にのりをつけ、かくれ蓑を焼いた灰の上をごろごろころがってみました。
 すると灰にも不思議な力があるとみえて、体がすーっと見えなくなるではありませんか。
「よし、これで最後の大仕事をしよう」
 盗人はそのまま、村一番の長者の屋敷へ泥棒にはいりました。
 屋敷の者たちは、目の前の物が次々に消えてなくなるのでびっくりです。
 盗人は思わず、口元を手をさすってクスッと笑いました。
 すると白い歯がチラッと現れたのです。
「見ろ、歯の化け物だ!」
 家中が大騒ぎになりました。
 盗人はあわてて逃げ出しましたが、手をさすった時に手のひらの灰がとれていたので、手のひらが二つヒラヒラと逃げて行く様子が誰の目にも明らかになりました。
「よし、あれを追うのだ!」
 みんなは手のひら目印に、どこまでも追ってきます。
 盗人は逃げて逃げて、全身に汗をかきました。
 すると汗に体中の灰が落ちてしまい、盗人はすっ裸のみじめな姿でつかまったということです。

おしまい

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