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2008年 12月20日の新作昔話

日切り地蔵

日切り地蔵
長野県の民話

 むかしむかし、天竜川(てんりゅうがわ)の河原に、男が一人で暮らしていました。
 男は村人たちに仕事を頼まれると手伝いに行って、そのお礼にもらう米や野菜で暮らしていたのです。
 頼まれるとどこへでも出かけて行ってよく働くので、村人たちから重宝がられていました。
 ところがあるとき、この男が病気になってしまったのです。
 身内はだれもいないので、村のみんなが面倒を見てやったのですが、具合は悪くなる一方です。
 そしてとうとう男は死んでしまって、村人の手で手厚く葬られたのです。
 村人たちは、また仕事に精を出しましたが、忙しくなるにつれてあの男の事を思い出すのです。
「あいつのおかげで、ずいぶんと助かったものだ」
「ほんとに、よく働いてくれたなあ」
 みんなは口々にそう言って、地蔵をたてて男をまつってやろうということになったのです。
 やがて河原に、一体の石の地蔵がたてられました。
 初めのうちは、みんなで地蔵の世話をしたのですが、時がたつにつれてだんだんと忘れてしまい、そのうち周りに草がおい茂って、どこにあるのかもわからなくなってしまいました。
 それから何年かたった、ある日の事。
 村人の一人が重い病気にかかって、明日をもしれぬ身となったのです。
 あれこれ手をつくしても良くならないので、家の者もすっかりあきらめていたのですが、ところがある晩、家族の夢枕に地蔵が立って、
「わしは河原の地蔵じゃ。わしを見つけて祭ってくれたら、病人を助けてやろう」
と、言うのです。
 そこでさっそく探してみたところ、くぼ地のすみに、つる草にからまれて一体の地蔵がころがっているではありませんか。
 みんなはすぐさま地蔵をきれいにして、小さなお堂を建てて、その中におまつりしました。
 すると病人がみるみる良くなって、しばらくするとすっかり元気になったのです。
 この話しはすぐに広まって、地蔵を拝みに来る者が大勢来ました。
 この地蔵は、
「いく日までに、何々をして下され」
と、日切りをしてお願いすると、必ずかなえてくれるというので、いつしか地蔵は、『日切り地蔵』と呼ばれるようになりました。

おしまい

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