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2008年 12月21日の新作昔話
出石乙女(いずしおとめ)
兵庫県の民話
むかしむかし、出石(いずし)の里に、出石乙女(いずしおとめ)という、美しくて心のやさしい女神が住んでいました。
出石乙女は天之日樫(あめのひぼこ)の娘で、美しさも家柄も良かったので、多くの若い神々が競って結婚を申し込んだのでした。
ところで、この土地に若い二人の兄弟神がいました。
あるとき兄神が、弟神に向かって、
「私は出石乙女に求婚したが駄目だった。お前はどうだ?」
と、尋ねました。
「あはははっ、出石乙女といっても、ただの女です。このわたしがその気になれば、簡単なことですよ」
と、弟神が言ったので、兄神は笑いながら、
「そうか。もし成功したら、私の背と同じ高さの瓶(かめ)に一杯の酒と、山海の珍味をすべてやろう」
と、約束したのです。
弟神は、さっそくこの事を母神に話すと、母神は山から藤の葛(かずら)を取ってきました。
そしてそれで衣服を織り上げて、弟神にそれを着させると、乙女の家に行かせました。
すると不思議なことに、弟神が乙女の前に出ると着ていた衣がいっぺんに藤の花に変わり、ついに弟神は乙女の心を得ることができたのです。
やがて二人は夫婦となり、毎日幸せに暮らしていました。
ところがこれをねたんだ兄神は、約束した品物を弟神に贈らなかったのです。
さあ、この様子をすべて見ていた父神は、
「兄とはいえ、弟との約束を破るとは何ごとだ!」
と、約束を破った兄神に呪文をかけたのです。
そのため、兄神は日増しにやせ細って、病の床につくようになりました。
そしてそれから八年もの間、兄神は父神に泣いて許しをこうたのです。
そこで父神はこれを許して呪文もとかれたので、やがて兄神も元気になって、その後は平穏な日々が続きました。
今でも出石町桐野(いずしちょうきりの)には、出石乙女を祭ったといわれる御出石神社(みづしじんじゃ)が残っています。
おしまい
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