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2008年 12月27日の新作昔話

ハリセンボンになった嫁さん

ハリセンボンになった嫁さん
富山県の民話

 むかしむかし、富山のある港町に、息子のお嫁さんをいじめる、お母さんがいました。
 ある日の事、となりの部屋で自分の裁縫箱(さいほうばこ)をのぞいていたお母さんがお嫁さんにむかって、
「あんた、わしの針山から針をとったね。一本たりないんだよ」
と、いいました。
 むかし、裁縫道具は、女の人の大切な嫁入り道具のひとつでした。
 だれもが嫁入りのときに自分の裁縫箱を持ってきて大切にし、家族でも勝手にさわることはしませんでした。
 お嫁さんは、
「違います。あたしは知りません」
と、何度も言いましたが、お母さんは聞き入れません。
「なんて嫁だろうね。人の物を盗んでおいて、知らないだなんて」
と、お嫁さんをネチネチといじめるのです。
 すっかりまいってしまったお嫁さんは、ある日とうとう、荒れている冬の海へ身をなげてしまったのです。
 お嫁さんが身をなげると海は大荒れになってしまい、お嫁さんの遺体は発見されませんでした。
 そしてそのかわりに、手まりに針を千本もさしたような不思議な魚が、波うちぎわに何十匹もうちあげられていました。
 土地の人たちはこの魚を『ハリセンボン』と呼び、海に身をなげたお嫁さんを供養するため、どこの家でも半日だけ、針仕事を休むようになったという事です。

おしまい

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