きょうの新作昔話
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夏の怖い話し特集
2009年 8月31日の新作昔話
姥ヶ火(うばがび)
大阪府の民話
むかしむかし、河内(かわち→大阪府)の枚岡神社では、一晩中、灯籠(とうろう)に明かりをともしていました。
あるとき、その灯籠の明かりが、真夜中になると消えてしまうことが何度もあったのです。
そこで神主たちは、
「これは、山の動物が油をなめに来るからではないだろうか?」
と、思い、その晩から見張りをすることになりました。
さて、その日の真夜中、神主たちが弓やなぎなたを手に見張っていると、どこからともなく、白髪の老婆が目をギラギラ光らせて現れました。
(あっ、あれは山姥にちがいない!)
神主たちは弓矢をかまえると、油のつぼをかかえて出てきた山姥に矢を放ちました。
放った矢には、するどい刃が付いていたので、山姥の首はスパッと切れると、空高く舞い上がりました。
「やった! 山姥を倒したぞ!」
神主たちが喜んだのもつかの間、なんと空高く舞い上がった山姥の首は、口から炎を吹き出しながら神主たちに襲いかかったのです。
「うわーっ! 逃げろーっ!」
神主たちは何とか社に逃げ込むと、内側から鍵を閉めました。
山姥の首は、一晩中社のまわりを飛び回っていましたが、やがて力尽きたのか、夜明け前には動かなくなりました。
さて、朝日がのぼってから社を出てきた神主たちが、その山姥の死体を調べてみると、それは村に住む年寄りだった事がわかりました。
今では百才近い老婆ですが、若いときはたいそう美人で、
「結婚してください」
「ぜひとも、家の嫁に」
と、多くの男たちが奪い合うほどだったのです。
ですが、不思議なことに結婚した相手は次々と死んでしまい、十人目の夫が死んだ時から、ずっと一人暮しをしていました。
そして、糸つむぎだけを唯一の楽しみに生きていたのですが、年を取って目がおとろえ、暗いいろりの明かりだけでは糸がつむげなくなりました。
そこであかりを得るために、神社の灯籠から油を盗むようになったのです。
考えてみれば可哀想な話ですが、神社での出来事を知った村人たちは、反対に老婆をけなしました。
「よりにもよって、神社から油を盗むだなんて、なんと罰当たりなことを。死んで当然だ」
そして死んだ老婆の供養もせずに、野ざらしにして野犬やカラスのエサにしたのです。
それからしばらくたったある日、あの老婆の首が化物となって現れました。
老婆の首は口から火を噴きながら村中を飛び回り、老婆の悪口を言った男の家を焼き払うと、どこかへ消えていったと言うことです。
おしまい
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