2009年 9月16日の新作昔話
ホラふき和尚
山口県の民話
むかしむかし、山口のあるお寺に、村の人たちから『ホラふき和尚』といわれているお坊さんがいました。
あんまりホラばかりふいているので、村の人たちは和尚さんのいうことを、まったく信用しません。
ある日の事、和尚さんは村人たちをおどろかせてやろうと思い、お寺の門前にある大きな池のほとりに、こっそりと、こんな立て札をたてました。
《明日のお昼、この池から竜が天にのぼるであろう。池の主の竜より》
さあ、この立て札を見た村の人たちはびっくりです。
むかしからこの池には竜が住んでいると言われているので、次の日の朝には、池のまわりは黒山の人だかりです。
その人だかりを見て、和尚さんはうれしそうに笑いました。
「あっはははは。村の者たちめ、まんまとひっかかったわい。さて、お昼になったらわしが出ていって、わしの仕業だと話してやろう。みんなのあきれた顔が見ものじゃわい」
さて、やがて、お昼が近づいてきました。
「よし、そろそろ行くとするか」
和尚さんが出かけようとすると、空がにわかにくもって、暗くなってきました。
そして目の前の池の水から、なんと本物の竜が姿を現して、銀色のうろこを光らせながら、黒い雲の中へ消えていったのです。
村人たちは驚きましたが、もっと驚いたのは、いたずらをした和尚さんです。
「なっ、なんと! まさか本当に竜がいるとは・・・」
しばらく呆然としていた和尚さんですが、すぐに村人たちの前に駆け出すと大声で言いました。
「おーい、よく聞け! あの立て札はな、実はわしが立てたんじゃ。わしが立てたおかげで、竜が現れたんじゃ!」
けれども、村人たちは、
「ほれ、またいつもの和尚のホラが始まった。竜が現れたのを自分の手柄にしよるぞ」
「ほんとに、しようのない和尚じゃ」
と、だれ一人、信じなかったという事です。
おしまい
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