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2009年 12月16日の新作昔話
水晶箱に入ったネズミ
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むかしむかし、ある国に、とても貧しい石切り職人のおじいさんがいました。
おじいさんは石を切ったり、石を磨いたりと、毎日せっせと働きましたが、暮らしは少しも楽になりません。
ある日の事、おじいさんがいつもの様に石を磨いていると、一匹のネズミが仕事場に入ってきました。
そしてネズミがおじいさんの足元を駆け抜けた時、キラリと何かが光りました。
「おや? 何だろう?」
見てみると、何とネズミがお金をくわえているではありませんか。
おじいさんは驚いて、ネズミに声をかけました。
「お金などくわえて、どこへ行くのかね?」
するとネズミはペコリと頭を下げると、お金を下に置いて丁寧に頼みました。
「お腹が空いて死にそうなのです。どうかこのお金で、食べ物を買って来て下さい」
「それはいいが、このお金はどこから持って来たんだい? まさか、人から盗んで来たのかい?」
「いいえ。西に行くと、誰も住んでいない古いお屋敷があるのですが、そこの蔵でお金の詰まったかめを見つけたのです。これからは毎日、お金を一枚ずつ運んできますから、わたしには肉を一切れ下さい。残りは、おじいさんの好きな物を買って下さい」
「よし、わかった。わしも食べる物がなくて困っていたところだ。助かるよ」
おじいさんはお金を受け取ると、さっそく買い物に出かけました。
次の日からネズミは毎日、お金をくわえてやって来るようになりました。
おじいさんはお金を受け取ると買い物に出かけて、ネズミと仲良く食べ物を分け合いました。
ところがある日、大変な事がおこりました。
ネズミがネコに、捕まってしまったのです。
「ネコさん、どうか、わたしを食べないで下さい」
「嫌だね。おれは腹ぺこなんだ」
「では、これから毎日、あなたに肉を差し上げますから、どうか命だけは助けて下さい」
「肉を毎日か。よし、いいだろう」
ネズミは約束通り、おじいさんから肉を受け取るとネコに半分やりました。
それから何日かして、ネズミはまた別のネコに捕まってしまいました。
ネズミはそのネコとも、同じ約束をしてしまいました。
これでネズミの食べる肉はなくなってしまい、ネズミはだんだんやせていきました。
そしてとうとう、ネズミは骨と皮だけになってしまったので、おじいさんが心配して尋ねました。
「ネズミくん。毎日食べ物を分けているのに、どうしてそんなにやせたんだい? わけがあるなら、話してごらん」
そこでネズミは、ネコに捕まって肉を分けてやっている事を話しました。
「そうか、そんなひどい事になっていたのか。・・・よし、わしに任せておきなさい」
おじいさんはそう言うと、仕事場から透明な水晶で出来た石の箱を持ってきました。
「さあ、この箱に入りなさい。そしてネコがやって来たら、ネコに嫌な事を言って、うんと怒らせてやりなさい。いいね」
「はい、おじいさんの言う通りにします」
ネズミが水晶の箱に入って待っていると、やがてネコたちがやって来ました。
「おい、早く肉を寄こせ」
「そうだ、何をぐずぐずしている」
ネコたちはネズミにそう言いましたが、ネズミはネコにアカンベーをして言いました。
「嫌だね。誰が肉をやるものか。お腹が空いているのなら、ミミズでも食べるがいいさ」
「何だと!」
「生意気なネズミめ! こらしめてやる!」
ネコたちは怒って、ネズミに飛びかかりました。
そして鋭い牙をむき出しにすると、ネズミに噛みついたのです。
しかしネズミは、固い水晶の箱の中にいるので平気です。
水晶の箱に噛みついたネコの牙は、ポキリと折れてしまいました。
「なんだ?!」
びっくりしたネコは、今度は鋭い爪を出してネズミに襲いかかりましたが、これも水晶の箱にはじかれて、ネコの爪もポキリと折れてしまいました。
「わあ、大切な牙と爪が!」
武器を二つとも失ったネコたちは泣きながら逃げて行き、二度とネズミの前には現れませんでした。
こうしてネコを退治したネズミは、それからもおじいさんと仲良く、幸せに暮らしたということです。
おしまい
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