2010年 11月19日の新作昔話
童子山
むかしむかし、童子山と呼ばれる山は大変金が出る所だったので、大勢の人が集まって金を掘っていましたが、掘った土の中から金を探し出すには、とても多くの水が必要でした。
そこでみんなは相談して、この山より北にある峠から水を引く事になって工事を始めました。
しかし、とても長い水路なので、なかなか水が流れてきません。
「駄目か」
みんなががっかりしていると、一人の子どもが現れて、
「水が欲しいのなら、私の歩く通りに掘ればいいよ」
と、言うのです。
それを聞いたみんなは、
「子どもの言う事に、付き合ってられるか」
と、話しを聞こうともしませんでしたが、でもそのうちに、
「まあ、とりあえず掘ってみるか」
と、みんなで子どもの歩く通りに掘ってみたのです。
すると不思議な事に、水がどんどん流れてくるのです。
「これはすごい。お前は、どこから来たんだ? 何と言う名前だ?」
みんなが尋ねると、子どもは、
「われは、野郎童子なり!」
と、言うやいなや、全身から光を放って山へと飛んで行ったのです。
それを見た人々は、
「きっと、山の神さまが子どもに姿を変えて、我らを助けて下さったのだ」
と、子どもが飛んで行った山を童子山と呼んで、山の神さまを祭ったということです。
おしまい
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