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2011年 2月7日の新作昔話

青海島(おうみじま)の猿亀合戦

青海島(おうみじま)の猿亀合戦
山口県の民話

 大むかしの事、山口県の青海島(おうみじま)と仙崎(せんざき)は陸続きだったので、歩いて行き来が出来ました。
 そのころ青海島にはたくさんのサルたちがいて、仙崎に行っては畑にいたずらをしてお百姓さんたちを困らせていました。

 ある、五月の昼下がりの事です。
 一匹のサルが仙崎への道を歩いていると、畳一畳敷もあろうかという大きな海ガメが気持ちよさそうに昼寝をしていました。
 いたずら好きなサルは、海ガメのこうらに乗って海ガメの首を引っぱると、
「こら、おきろ! おきろ!」
と、わめきました。
 すると目を覚ましたカメがびっくりして首を引っ込めたので、サルは手をこうらの中にはさまれてしまったのです。
「あいたた! あいたた! ウキー! ウキー!」
 サルはキーキーと泣いて、仲間に助けをもとめました。
 するとその声を聞きつけて、二百匹ものサルたちが集まって来ました。
「みんな、力をあわせて仲間を助けるんだ! それ、手をつなげ!」
 集まったサルたちは手をつなぐと、つな引きの様に手をはさまれたサルを引っ張りました。
「よいしょ! よいしょ!」
 しかし大海ガメの力は強く、サルたちはずるずると海に引きずられていきます。
 手をはさまれたサルは、もう少しでおぼれそうです。
「後ろのやつ、あの松の木につかまるんだ!」
 一匹のサルが言うと、後ろにいたサルたちが岩からしっかりと生えている松の木に抱きつきました。
「絶対に、放すなよ。放したら、海に引きづり込まれるぞ!」
 サルたちは松の木にしがみついてがんばったので、ここでようやく大海ガメの動きが止まりました。
 急に動けなくなった大海ガメは、何だろうと思って首を伸ばすと後ろの方を見ました。
 その時、こうらにはさまれていたサルの手が、すっぽりと抜けたのです。
「抜けた! わっ、わわわわー!」
 ドシーン!!
 バランスをくずしたサルたちは尻もちをついて、いやというほどお尻の皮をすりむいてしまいました。

 この事があってから、青海島のサルのお尻はほかのサルよりも赤くなったのです。
 また、青海島が今のように仙崎から遠く離れてしまったのも、サルたちが尻もちをついたはずみで動いてしまったのだと言われています。

おしまい

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