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2011年 3月23日の新作昔話

キツネと薬

キツネと薬
和歌山県の民話

 むかしむかし、安養寺の裏山に、一匹の古ギツネが住んでいました。
 このキツネは、ときどきお寺の小僧に化けてイタズラをします。

 ある日、このキツネが腹痛になりました。
 キツネは人間の医者に薬をもらおうと思い、お寺の小僧に化けて川向いの医者のところへ行きました。
「和尚さんが、腹痛になりました。お薬を下さい」
「おおっ、それは大変だ。では、これを持って行きなさい」
 医者が薬をくれたので、キツネが化けた小僧は大急ぎで山へ帰っていきました。

 次の日、医者が和尚さんの様子を見に行くと、和尚さんが元気に庭の掃除をしています。
(おや、もう治ったのかな?)
 医者が和尚さんに具合をたずねてみると、和尚さんは腹痛などしていないと言うのです。
「でも確かに、小僧さんが薬を取りに来たのですが?」
 医者が首をかしげると、和尚さんは手をポンとたたいて言いました。
「ああ、それはおそらく、裏山に住んでいる古ギツネの仕業でしょう」
 そこで二人が裏山のほら穴へ行ってみると、穴の入り口で大きなキツネがお腹に薬の袋をくくりつけて死んでいました。

 このキツネ、薬をもらったまではよかったのですが、その薬の使い方を知らなかったのです。

おしまい

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