和尚と小僧のわらい話
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2011年 4月8日の新作昔話

毒のナシ

毒のナシ
和尚と小僧の笑い話

 むかしむかし、ある山寺に、和尚さんととんちのきく小僧さんがいました。

 このお寺の境内には、実のならないナシの木が一本あったのですが、どうしたことか、ある年、ナシの木が突然に実をつけたのです。
 ナシが大好物な和尚さんはうれしくて、まだ青いうちからナシがうれる日を楽しみにして待っていました。
 ところがちょうど食べ頃になった時に急用が出来て、和尚さんは出かけなくてはなりません。
 それで、小僧さんを呼んで、
「あれは毒ナシだから、決して食ってはならんぞ」
と、言い聞かせて、出かけていきました。

 和尚さんの姿が見えなくなると、小僧さんはナシの木の所へ行きました。
 見れば見るほどおいしそうなナシで、とても毒ナシとは思えません。
 とうとうがまん出来なくなって、小僧さんが棒でナシをつつくと、うれたナシの実がポトリと落ちてきました。
「しまった。・・・でも、このまま捨ててはもったいない」
 そこで小僧さんが恐る恐るナシを口に入れると、それがほっぺたが落ちるほどおいしいナシだったのです。
「やっぱり。いつもながら、ずるい和尚さまだ」
 毒ナシというのは和尚さんのうそだと気が付いた小僧さんは、ナシの実を一つ残らず食べてしまいました。

 さて、このままでは和尚さんにひどくしかられると考えた小僧さんは、居間にかざってある和尚さんの大事な茶わんをガチャンと割って、
「わあーん、わあーん」
と、泣き真似を始めました。

 やがて戻って来た和尚さんは、小僧さんが泣いているのでびっくりです。
「どうした? なぜ泣いておるんじゃ?」
 すると小僧さんは、涙をふきながら答えました。
「はい、実は、和尚さまの大事な茶わんを洗おうと思ったら手が滑って、割ってしまったのです。それで死ぬより他はないと、毒ナシを食って死ぬのを待っているんです」
「なんと・・・」
 これには和尚さんも、返す言葉がありませんでした。

おしまい

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