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2011年 5月6日の新作昔話

ヒツジの始まり

ヒツジの始まり
リビアの昔話

 リビアでは、世界で最初に生まれた人間は、魔法を使う女の人だと言われています。
 この女の人が他の人間や家畜を作ったので、みんなは彼女の事を最初のお母さんと呼んで慕っていました。

 ある日の事、最初のお母さんが土を練って、四本足の新しい動物を作りました。
 形が出来上がると、最初のお母さんはその動物を麦のもみがらの中に入れました。
 すると動物の体にはもみがらがたくさんついて、それはやがて綿毛になりました。
 最初のお母さんは、同じ動物を全部で四匹作りました。
 二匹はオスで、二匹はメスです。
 やがて魔法の力でその動物に魂が吹き込まれると、四匹の動物たちは『メエー、メエー』と、鳴き始めました。

「あの『メエー、メエー』と鳴くのは、いったい何だろう?」
 人間たちは最初のお母さんが何を作ったのかを知りたくて、頭の良いアリに調べてくれるように頼みました。
 最初のお母さんの家へ行ったアリは、その生き物がヒツジいう名前で、その肉はとても美味しく、その毛からは糸が出来ることを教えてくれました。
「美味しい肉に、糸が出来る毛か」
 人間たちはアリの話を聞いているうちに、そのヒツジがどうしても欲しくなりました。
 そこで自分たちが畑をたがやして作った麦をたくさん持って行き、最初のお母さんに頼みました。
「最初のお母さん、どうかこの麦とヒツジと交換してください」
「ええ、いいですよ。大切に育ててくださいね」
 こうして人間は、ヒツジを手に入れました。
 これが、物々交換の始まりです。

 ヒツジを手に入れた人間はヒツジを上手に育てて、その数をどんどん増やしていきました。
 おかげで人間は美味しいヒツジの肉をお腹いっぱい食べられるようになり、毛をつむいで糸にして美しい布を織る事も出来るようになりました。

 ところで、ヒツジたちは普通の動物と同じ様に、歳をとれば老いて死んでしまいますが、でも最初のお母さんが一番初めに作った一匹だけは、いつまでたっても若いままで決して死ぬ事がありませんでした。

 ある日、その初めの一匹は、高い山のてっぺんへ登っていきました。
 そして山のてっぺんでうろうろしていると、山の向こうから昇ってきた太陽が初めのヒツジの頭にぴたりとくっついてしまったのです。
 それから初めのヒツジは太陽を頭に乗せたまま、東から西へと散歩するようになりました。

 今でも太陽が東から昇って西に沈むのは、初めのヒツジが頭に太陽を乗せたまま散歩しているからだと言われています。

おしまい

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