2011年 8月19日の新作昔話
血染めの足型
高知県の民話
むかしむかし、高知県南国市の篠原(しのはら)という所に、渋谷権右衛門(しぶやごんうえもん)という郷士(ごうし→武士でありながら、農村で農家をする人)がいました。
その渋谷の家には、お春という娘が女中奉公をしています。
お春はとても美しく、とてもよく働く気だての良い娘だったので、主人の弟の藤四郎(とうしろう)という若者が、お春を嫁にしたいと言ってきたのです。
ところがお春には、すでに結婚の約束をしている男の人がいたのです。
そしてその事を知った藤四郎は、恋のうらみから、好きだったお春をにくむ様になったのです。
そんなある日の事、お春が渋谷家に伝わる家宝の皿を洗っていると、藤四郎がお春に用事を言いつけました。
その用事は大した物ではなく、お春は用事を済ませるとすぐに帰ってきたのですが、でもそのすきに藤四郎が洗いかけの家宝の皿を一枚盗んで、どこかへ隠してしまったのです。
皿が一枚足りない事に気づいたお春は、まっ青な顔で皿がなくなった事を主人の渋谷権右衛門に報告しました。
「なんだと! あの皿一枚は、お前の命よりも価値があるのだぞ!」
ひどく怒った渋谷権右衛門は、なんとお春を殺してしまったのです。
それからです。
この屋敷で、怪しい事が起り始めたのは。
まずは夜中になると、どこからともなく若い女の皿を数える声が聞こえてきます。
「・・・一枚、・・・二枚、・・・三枚、・・・」
そして最後の一枚足りないと、しぼり出すような声で泣くのです。
「ううっ、足りない、一枚足りない。どうして? どうしてなの? わたしはなくしていないのに・・・」
その声に悩まされた藤四郎は、高い熱を出して何日ももがき苦しみ、とうとうお春の殺された場所で死んでしまったのです。
そしてその場所には、お春の物と思われる血染めの足型が現れました。
主人の権右衛門は家の者に命じて、すぐに血染めの足型をふき取らせました。
しかし次の日になると、血染めの足跡がまた現れたのです。
血染めの足形は、何度ふき取らせても消えませんでした。
これにはさすがの権右衛門も怖くなり、屋敷の西に『春喜(はるき)さま』と呼ばれる祠を建てて、お春の霊をまつったそうです。
おしまい
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