2011年 8月24日の新作昔話
墓場の化け物
むかしむかし、ある町はずれの墓場に、大男の化け物が出るとのうわさがありました。
町の人たちは怖くて、日が暮れると誰も墓場のそばを通りません。
ある日、このうわさを聞いた若者たちが、こんな事を言いました。
「なあ、みんなで金をかけて、肝試しをやろうじゃないか」
「おおっ、それはおもしろそうだ」
「よし、まずは、おれが行こう」
そこでその日の夜遅く、若者の一人が自分の名前を書いた杭を手に、墓場へと入っていきました。
ちゃんと墓場まで行った証拠に、墓場の一番奥に自分の名前を書いた杭を打ち込んで来るのです。
「なんだ、張り切ってやって来たのに、何も出て来ないじゃないか」
化け物が出てこないので、若者はがっかりです。
「しかたない、杭を打ち込んで帰るか」
墓場の奥に行った若者が杭を打ち込んでいると、どこからともなく大男の化け物が現れ、キバの様な歯をガチガチと鳴らしました。
「お前は誰だー! ここで何をしているー!」
「うひゃー! で、出たー!」
若者が逃げ出すと、化け物は長い手をのばして若者を追いかけてきました。
「待てーっ! 逃がさぬぞー!」
その化け物の手のひらには、大きな目がついています。
若者は、何とかお寺に逃げ込むと、
「た、助けてくれーっ! ば、化け物がーっ!」
と、和尚さんにしがみつきました。
事態を察した和尚さんは、
「では、この長持(ながもち→収納ケース)に隠れなさい。そして決して、声を出してはいけませんよ」
と、若者を長持に隠すと、本堂に戻って懸命にお経を唱え始めました。
やがて、お寺に入ってきた化物は、あたりを見回すと、
「ふん。隠れても無駄だ。どこへ隠れても、においでわかるぞ」
と、くんくんとにおいをかぎはじめ、そして、
「そこか!」
と、若者が隠れている長持を、バリバリと壊し始めました。
和尚さんは怒鳴るような大声でお経を唱えますが、化物は全然怖がりません。
化物が長持を壊す音はしばらく続きましたが、やがて静かになったので、和尚さんは恐る恐る若者が隠れている長持の方へ行ってみました。
すると、
「おおっ、長持は無事だ! さては化物め、わたしのお経に恐れをなして逃げていったな」
と、和尚さんは喜びながら、長持のふたを開けてみました。
「若者よ、大丈夫か。・・・あっ!」
なんと若者は、長持の中で骨だけになっていたのです。
おしまい
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