2011年 10月21日の新作昔話
ほら吹き男爵 八本足のウサギ
ビュルガーの童話
わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
みんなからは、「ほらふき男爵」とよばれておる。
今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。
今度もまた、ダイアナの話だ。
わがはいは丸二日間、ぶっ通しで一匹のウサギを追いまわした。
ダイアナは何度もウサギをわがはいの方へ追い込んでくれたのだが、このウサギは右と思えば左に、左と思えば右へと、とてもすばやく逃げまわるので、どうしても狙いが定まらない。
「鉄砲の名人が、一匹のウサギに二日も振り回されるとは。なさけない」
この時ばかりは、さすがのわがはいも自信を失いかけた。
しかしやっとの事で、ダイアナが鉄砲の玉の届く所まで追ってくれたので、どうにか仕留める事が出来て、わがはいの名誉はたもたれたのだ。
「やれやれ、手こずらせてくれたわい。いったい、どんなウサギだ? ・・・ややっ!」
わがはいは、ダイアナがくわえてきたウサギを見ておどろいた。
なんとそのウサギには腹の下の四本の足のほかに、背中にも四本の足が生えていたのだ。
つまりこのウサギは、下の四本の足が疲れると、水泳の背泳ぎのようにくるりとひっくり返って、今度は背中の足で走るというわけだ。
なるほど、これでは、わがはいの鉄砲の狙いが定まらないのは無理もないし、ダイアナも手こずるのも当然だ。
八本足のウサギを相手にするときは、丸二日は覚悟をしよう。
これが、今日の教訓だ。
では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい
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