2012年 3月9日の新作昔話
長い名前の子ども
福井県の民話
むかしむかし、名田庄村(なたじょむら)という所に、ある夫婦がいました。
可哀想な事に、この夫婦の間に生まれた子どもはすぐに死んでしまうので、夫婦は和尚さんに相談をしました。
すると和尚さんは、
「むかしから長い寿命には、長い名前がよいというぞ」
と、言って、次に生まれた子どもに、こんな名前をつけてくれました。
『とこへーとこへー、とこへーがーのーこ、へんめいしきしきしーがんじー、かみたば、かみたば、いっちょーぎりか、ちょーぎりか、ちょんちょこざいのてんもくそー、てきわてきそる、そうたかにゅーどー、はりまのべっとー、ちゃわんのちゃぽすけ、つけんのこうすけ』
長い名前のおかげか、生まれた子どもはすくすくと育ちました。
ある夏の日の事です。
大きくなった子どもが、友だちと一緒に川に泳ぎに行きました。
川は大雨が降ったあとだったので、水の勢いがとても急でした。
その為に遊んでいた子どもたちの多くが、川におぼれてしまいました。
「大変だー! すぐに知らせてやらねえと!」
無事だった子どもたちはあわてて村に戻ると、おぼれた子どもの親に子どもがおぼれた事を伝えました。
そのおかげで、おぼれた子どもたちは次々と自分の親に助け出されたのですが、あの名前の長い子どもだけは、親に名前を伝えるのに時間がかかってしまい、助けるのが遅れておぼれ死んでしまったという事です。
おしまい