2012年 4月13日の新作昔話
百足の大きなわらぞうり
京都府の民話
むかしむかし、ある静かな村の近くに、悪人たちが住み着くようになりました。
悪人たちは村にやってきては暴れて、時にはお金を取ったり、時には女の人をさらっていったりしたのです。
そんな事が何年も続いたので、村人たちは庄屋さんの家に集まると、悪人たちを何とかしようと相談を始めました。
「こうなれば、代官さまに訴えよう!」
「しかし、あいつらは代官に訴えると、村を焼き払うと言っているぞ」
「それなら、村人みんなで戦おう!」
「戦うと言っても、あいつらは我々よりも大勢いるぞ。下手をすれば村人全員皆殺しだ」
話し合いは、何日も続きました。
そんなある日、一人の老人が名案を思いついたのです。
「みんなで、大きなわらぞうりをたくさん作ろう。そうすれば悪人たち、自分たちよりも強い者がいると思って、恐れるのではないかな」
そこで村人たちは、さっそくみんなでわらを持ち寄って、大きなわらぞうりを百足作りました。
そしてそのわらぞうりをわざと見えるところにおいて、こんなうわさを流したのです。
『村では悪人たちを退治するために、都から百人の力自慢を呼び寄せた。準備が整い次第、百人の力自慢が悪人退治を始める』
そして、そのうわさを聞いた悪人たちが、村へ偵察に行くと、あちこちの家に大きなわらぞうりがあるのです。
「これは、百人の力自慢がすでに村へ来ており、村人たちの家に泊まっているに違いない」
そう思った悪人たちは、退治されては大変だと、その日の晩に遠くへ逃げて行ったという事です。
おしまい