2012年 8月27日の新作昔話
外法人形
むかしむかし、ある男が川を見ていると、板きれに乗った人形が流れてきました。
小さな女の子の姿をした、とても可愛らしい人形です。
「どれ、家で待っている子どもに持って帰ってやるか」
男がその人形を拾い上げようとすると、人形は突然口を開いて、
「明日は、どこどこの年寄りが死ぬだろう。そして誰々がなくした物は、高い所から出てくるだろう」
と、勝手に占いを始めたのです。
「ははーん。これは祈祷師が使う、外法人形というやつだな」
男は面白がって、人形に色々な事を占わせていましたが、人形は夜通ししゃべり続けるので、うるさくてかないません。
どこかに捨てようかとも思いましたが、不思議な力のある人形をむやみに捨てたりしては、たたりがあるのではないかと思い、物知りの老人に相談してみました。
すると、その老人は、
「それなら、拾った時と同じように板に乗せて、拾ってきた川に流すといいだろう。そして流すときは、川を背にして立ち、後ろ手に板きれを川に浮かべて、いつ流したとも知らぬうちに手を放しなさい。後はそのまま、後ろを見ずに立ちさればよい」
と、教えてくれました。
そこでその通りに人形を捨てたところ、何も悪い事は起きなかったそうです。
おしまい