2012年 9月3日の新作昔話
京河さま
岐阜県の民話
むかしむかし、矢迫間(やばさま)と言うところの山の中に、『京河(きょうがわ)さま』と呼ばれる小さな神社がありました。
その横の谷に、京河さまの池と言うのがあるのですが、これはその池にまつわるお話です。
ある年の夏は、くる日もくる日も日照り続きで、みんな途方に暮れていました。
「このままでは、作物は全滅だ」
「こうなれば、雨乞いをしよう」
そこでみんなは近くの神社やお寺をまわって雨乞いをしましたが、雨は一向に降りません。
そして最後の頼みと、小さな神社の京河さまへお参りに行ったのです。
みんなが一心にお参りしていると、葉っぱだらけの小さな池の水が、急にごうごうと動き出して、中から池の主の大蛇が姿を現しました。
それを見たみんながびっくりしていると、その大蛇が言いました。
「お前たちは、さっきから何をそんなに一生懸命頼んでいるのだ?」
すると村の代表の庄屋さんが、ふるえながら答えました。
「はい。この夏は、雨が一粒も降らないので、田畑は枯れてしまい、飲み水にも不自由しております。そこで京河さまへ雨を降らせてもらおうと、お願いしていました」
すると大蛇は、
「そんなことか。なら、この池を、きれいに掃除してくれ。葉っぱや泥だらけで困っていたのだ。きれいにしてくれたら、必ず雨を降らせてやるから」
と、また池の中へと潜ってしまいました。
そこでみんなは、大蛇の言葉通りに池をきれいに掃除して、村に帰ったのです。
するとその日の夜遅く、ポツリポツリと大粒の雨が降り始めたのでした。
喜んだ村人は、それからも雨に困ることがあると、京河さまの池を掃除して、雨を降らせてもらったという事です。
おしまい