2012年 9月28日の新作昔話
スズメの贈り物
栃木県の民話
むかしむかし、あるところに、とても心のやさしいおじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人には子どもがいなかったので、一羽のスズメを飼っていました。
おじいさんとおばあさんは、暇さえあれば鳥かごの戸を開けて、出てきたスズメを手や肩に乗せて遊びます。
「さあ、今日もいい子だね」
「今日も可愛いね」
スズメのおかげで、おじいさんもおばあさんもさびしいと思ったことがありませんでした。
ところが、ある日の事、いつものように鳥かごを開けたら、スズメはパッと飛び出して、そのまま空高くへ登ってしまったのです。
おじいさんとおばあさんは、あわてて空を見上げて言いました。
「どうしたんだい? 何かあったのかい?」
「お願いだから、降りてきておくれ」
それでもスズメは、どんどん空へ登っていき、とうとう姿が見えなくなりました。
おじいさんもおばあさんも悲しくて、涙がポロポロとこぼれました。
すると雲の中から、さっきのスズメが現れて、二人の頭の上までおりてくると、小判をジャラジャラとまき散らしたのです。
「お金なんかいいから、早くもどってきておくれ」
でも、スズメはそのまま、どこかへ飛んで行ってしまいました。
二人はとても悲しかったけれど、そのお金で、なに不自由なく暮らせるようになりました。
さて、この話を聞いたのが、隣の欲張りじいさんと、欲張りばあさんです。
「スズメを育てて、それを空に放すと、恩返しに小判をくれるのか。いっひひひひ。これで、おれたちも大金持ちだ」
「そうですね。では、さっそくスズメを捕まえに行きましょう」
こうして欲張りじいさんと欲張りばあさんは、さっそく山へ行ってスズメを一羽捕まえてきました。
そして、エサも与えずに数日の間、鳥かごに閉じ込めて、鳥かごを開けました。
するとスズメはあわてて逃げだして、空高く飛んでいきました。
欲張りじいさんと欲張りばあさんは、すぐに庭に出ると逃げていくスズメに言いました。
「さあ、早く小判を持っておいで!」
「隣の家よりも、たくさんの小判を持っておいで!」
すると雲の中から、さっきのスズメが現れて、二人の頭の上までおりてくると、何かをバラバラと落としました。
「よし、これで大金持ちだ!」
二人が喜んで両手を広げると、何と落ちてきたのは、スズメのうんちやおしっこだったのです。
こうして欲張りじいさんと欲張りばあさんは、スズメのうんちやおしっこだらけになってしまいました。
おしまい