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2012年 12月28日の新作昔話

クマとお百姓の分け前

クマとお百姓の分け前
デンマークの昔話デンマークの情報

 むかしむかし、デンマークのある村に、とても広い畑を持っているお百姓さんがいました。
 その畑の中には小さな丘があって、いつも草がぼうぼうです。
 ある日の事、お百姓さんは丘にやってくると、
「どれ、ここも畑にしよう」
と、草を引き抜いて、くわでたがやし始めました。
 そのとたん、丘の中ほどにあるほら穴に住んでいたクマが飛び出してきたのです。
「こらー! どうして、おれの住んでいる丘を壊すのだ!」
 しかし気の強いお百姓さんは、平気な顔で言いました。
「おやおや、ここがあんたの住まいだなんて、ちっとも知らなかったよ。でも、草ぼうぼうにしておくのはもったいない。畑にすれば、色々な物がとれるのに」
「なに! 畑にするだと! そんな事は許さんぞ!」
 クマがどなりましたが、お百姓さんは首を振って、
「いやいや、畑にすると言ったって、あんたの住んでるほら穴まで潰そうと言うのではない」
「なら、どうするのだ?」
「そうだな。ここに種をまき、秋になって出来た物を、二人で分けるというのはどうかね?」
「なるほど。だが、おれに畑仕事を手伝えと言うのか? おれはそんな面倒な事はしないぞ!」
「とんでもない。丘をたがやすのも、種をまくのも、わたしが一人でやる。お前さんは、ただ分け前を受け取るだけでいい」
「ふむふむ、働くのはお前で、おれは分け前をもらうのか。なるほど、それはいい話だな。だが、どうやって分ける?」
「まず始めの年は、土の上に出来た物をわたしがもらい、土の中に出来た物は、みんな、あんたの物さ」
「そうか。それじゃ、土の上に出来た物は、いつもらえるんだ?」
「次の年は、土の中に出来た物をわたしがもらい、土の上に出来た物は、みんなあんたの物さ。こうやって、一年毎に取る方を取り替える。これでどうだ?」
「よくわかった。楽しみだ」
 クマは、すっかりご機嫌になって、ほら穴に戻っていきました。
 さて、百姓さんはさっそく丘をたがやして、麦の種をまきました。
 やがて、麦はたくさんの穂をつけました。
 それを知ったクマが、にこにこしながらやってきました。
「クマよ。約束通り、土の上の物はわたしがもらうぞ」
 お百姓はそう言って、麦の穂を刈ると家に運びました。
 土の中に残っているのは、麦の切りかぶだけです。
 そして次の年、お百姓さんは畑にニンジンの種をまきました。
 秋になると、お百姓さんは土の中のニンジンを取り、クマには土の上の葉っぱだけをわたしました。
 こうして、お百姓さんは毎年、土の中になる作物と土の上になる作物とを入れ替えて、クマをだまし続けたそうです。

おしまい

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