2013年 6月28日の新作昔話
塩の長者
弘法大師話
むかしむかし、旅の途中の弘法大師が、あるみすぼらしい家に立ち寄って言いました。
「のどが渇いて困っております。どうか、お茶をくれませんか?」
すると家の中から、おじいさんとおばあさんが出てきて言いました。
「これはお坊さま。あいにくと貧乏なもので、お茶はありません。でもその代わりお湯ならありますので」
おじいさんとおばあさんは、大師のためにわざわざお湯を湧かしてくれました。
そして、お湯を大師に差し出しながら、申し訳なさそうに頭を下げました。
「お茶うけに何かあればよいのですが、あいにくここらは塩不足で、漬物も差し上げられません」
「いえ、このお湯で十分ですよ」
ていねいなもてなしに深く感動した大師は、家の前にある大木の下に錫杖を深く差し込んで穴を開けると言いました。
「この穴から出る水を、煮詰めてみなさい。それでは、おいしいお湯をありがとうございました」
「はい、お坊さま、お気を付けて」
大師が旅立ってしばらくすると、大師が開けた穴からきれいな水がわき出てきました。
おじいさんとおばあさんは言われた通りに、それを鍋で煮詰めてみました。
すると不思議なことに、その水が真っ白な塩になったのです。
「これは、塩じゃ! 水が塩になったぞ!」
おじいさんとおばあさんは大喜びです。
それから、おじいさんとおばあさんは塩をたくさん作って、とても暮らしが裕福になったそうです。
おしまい
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