1月14日の世界の昔話
チーズの行方
イギリスの昔話 → 国情報
むかしむかし、イギリスのゴタムという村に、すこしかわった人たちがすんでいました。
ある日のこと、ゴタム村の一人の男が、となりの町へチーズをうりにいきました。
男がおかの上へきたとき、ふくろの中のチーズが一つころがり出て、そのままコロコロコロコロと、さかの下へころがっていきました。
「こら、とまれ!」
男はどなりましたが、チーズはとまらないでころがっていきます。
「ふむふむ、なかなかじょうずにころがっていくなあ」
と、男はかんしんして、
「あれならきっと、わしよりもはやく一人で町の市場までころがっていくだろう。・・・そうだ、ほかのチーズたちもいっしょにいくがいい」
男はそう言うと、持っていたふくろの中のチーズを、ぜんぶさか道へころがしました。
するとチーズは、コロコロコロコロと、道ばたのやぶの中へころがりこんで、見えなくなりました。
荷物がなくなってみがるになった男は、テクテクあるいて町の市場へやってきました。
ところが、そこにはチーズはまだ一つもきていません。
「おかしいな。すこし、おくれてくるのだろうか?」
男は市場のイスにこしをかけて、チーズがくるのをまっていました。
でも、いくらまってもチーズはやってきません。
そのうちに、市場のしまる時間になりましたので、男はまわりの人たちにたずねてみました。
「あの、わしのチーズがここへやってくることになってるんだが、だれか見かけなかったかね?」
「さあ? しらないねえ。ところでそのチーズは、だれがもってくるんだい?」
と、中の一人にたずねられて、
「いや、だれかではなく、チーズはじぶんでやってくるんだよ。さかをうまくころがってね。だが、どこかで道草(みちくさ)をくっているんだろうか? それとも、あんまりはやくはしったから、この市場をはしりぬけて、つぎの町までいってしまったのかな? そうだ、きっとそうにちがいない」
男はさっそくウマをかりてとびのると、つぎの町までチーズをおいかけていきました。
でも、そこまでいっても、やっぱりチーズのすがたは見えません。
チーズはいまも、行方不明(ゆくえふめい)のままだそうです。
おしまい
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