3月2日の世界の昔話
四人の子ども
アルゼンチンの昔話 → 国情報
むかしむかし、あるところに、四人の子どもをもったお母さんがいました。
子どもたちは、みんないうことをきかなくて、けんかばかりしていました。
でも、一番下の息子のピカフロルだけは、お母さん思いのいい子でした。
ある日、お母さんは子どもたちをよんでいいました。
「おまえたち。お母さんはすっかり年をとってしまった。おまえたちも、もう大きくなったのだから、自分たちでしごとをさがしてごらん。そうしたらお母さんも、安心して死ねるよ」
すると、一番上のコルコルがいいました。
「ぼくは、山のおくの森ヘいくよ。そして昼間はねむって、夜になったら食べ物をさがすのさ」
「わたしは、お墓のそばにすむわ。あそこはとてもしずかだもの。おなかがすいたら、たべるものをさがせばいいわ」
と、二番目のレチューサがいいました。
「わたしは、すてきな糸をおるのよ。はたをおくところは、くらいすずしい場所にするわ」
と、三番目のアラーニャがさけびました。
「ピカフロルや。おまえはどうするんだね?」
と、お母さんは四番目の息子に聞きました。
「ぼくはお母さんのそばにいます。お母さんのおせわをして、お母さんのためにはたらきます」
と、ピカフロルはいいました。
いく月かたったある日、お母さんはおもい病気にかかりました。
死ぬときが近づいてきたのを知ったお母さんは、ピカフロルに、にいさんやねえさんをさがしにやりました。
ピカフロルは、森のおくにすむにいさんを見つけていいました。
「お母さんがひどい病気です。にいさん、帰ってあげてください」
けれどもコルコルは、大きなあくびをしてこたえました。
「昼まっから外ヘでかけるなんてごめんだ。帰ってくれ。おれはねむくてたまらないんだよ」
次にピカフロルは、お墓のそばにすむ、レチューサのところへいきました。
「あら、これから髪の毛の手いれをするところよ。それに、こんなわるいお天気に外ヘなんかいきたくないわ」
レチューサはこういって、ことわりました。
次にピカフロルが、三番目のアラーニャをたずねると、アラーニャはいそがしそうにはたを動かしていました。
「お母さんにいってよ。わたしはきょう、はたをおりはじめたところなのよ。だからよそヘなんかいけませんて」
ピカフロルは家へ帰って、お母さんに、みんながこられないわけをはなしました。
病気のお母さんは、子どもたちのつめたい心をたいそう悲しみました。
やがて死ぬときがくると、お母さんは子どもたちのこれから先のことについて、こういいました。
「わたしの四人の子どもたちは、それぞれに、神さまの罰(ばつ)やおめぐみをうけるだろうよ。コルコルは、ふかい森のくらやみに人びとからかくれてくらすだろう。レチューサは、だんだんみにくくなり、レチューサが口をきけば、人びとはふるえあがるだろう。アラーニャは、はたをおってくらすだろう。だが、アラーニャの糸はだれにも喜ばれないだろう。そしてピカフロルは、どこへいっても喜ばれ、だれもが見とれるほど美しくなるだろう」
お母さんが死ぬと、神さまたちは四人の子どもたちを、鳥や虫にかえてしまいました。
コルコルは、大きなミミズクにされました。
そしていつも、人からにげるように森のくらやみにかくれてくらしました。
レチューサは、みにくいフクロウになりました。
ちょっとでもレチューサのすがたを見かけたり、声を聞いたりすると、人びとは青くなりました。
アラーニャは、糸をおりつづけました。
けれども、アラーニャの糸はだれにも喜ばれません。
それは、クモの糸だったからです。
さて、みんなを喜ばせ、見とれさすといわれたピカフロルは、赤いのどをしたハチドリになりました。
あたたかい、お天気の日に、ユリやフウリンソウの上をとびまわって、あまいみつをすっています。
せわしなくはばたいて、かわいらしい曲をひきながら、キラキラかがやく羽で庭いっぱいに、小さな虹(にじ)をまいてとんでいます。
おしまい
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