3月31日の世界の昔話
シンデレラ
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むかしむかし、ある国に、とても美しくて、とても心優しい娘がいました。
でも悲しい事に、娘のお母さんは早くになくなってしまいました。
そこでお父さんが二度目の結婚をしたので、娘には新しいお母さんと二人のお姉さんが出来ました。
ところがこの新しいお母さんと二人のお姉さんたちが、そろいもそろって大変な意地悪だったのです。
新しいお母さんは、自分の娘たちよりもきれいな娘が気に入りません。
「まあ、お前は何て、にくらしい娘でしょう」
お母さんと二人のお姉さんは、食事の用意から、お洗濯から、お掃除まで、つらい仕事は全て娘に押しつけました。
そして娘からきれいな部屋を取り上げると、娘をクモの巣だらけの薄汚れた屋根裏部屋に追いやりました。
二人のお姉さんたちは大きな鏡のあるきれいな大理石の部屋で、ふかふかの暖かいベットで気持ちよく眠りますが、屋根裏部屋の娘には一枚の毛布すら与えられず、わらの中で犬のように丸くなって寝るように言いつけられました。
二人のお姉さんたちは仕立屋に作ってもらった流行の上等な服を着ているのに、娘はつぎ当てだらけのボロボロの服しか着せてもらえません。
それに娘はお風呂に入る事も許してもらえず、娘の頭にはいつもかまどの灰が付いていました。
そこで三人は娘の事を、『灰をかぶっている』と言う意味のシンデレラと呼んだのです。
可愛そうなシンデレラでしたが、それでもシンデレラの美しさは、お姉さんたちの何倍も何倍も上でした。
ある日の事、お城の王子さまがお嫁さん選びの舞踏会(ぶとうかい)を開く事になり、シンデレラのお姉さんたちにも招待状が届きました。
お姉さんたちは、大喜びです。
「もしかすると、王子さまのお嫁さんになれるかもしれないわ」
「いいえ。もしかするとじゃなくて、必ずお嫁さんになるのよ」
二人はシンデレラに命じて、舞踏会に着ていく服を持って来させました。
「どう、シンデレラ。このイギリスかざりのついた、赤いビロードのドレスは素敵だと思わない?」
「シンデレラ、こっちも見なさいよ。この金の花もようのマントとダイヤモンドを散りばめた帯は、とっても高価な品物なのよ」
シンデレラは二人の着替えを手伝いながら、ニッコリ笑って言いました。
「ええっ。お姉さまたち、とっても似合っていますよ」
それから二人のお姉さんたちは町で一番腕の良い美容師をよんで、それぞれのドレスに似合った髪型と髪飾りをしました。
二人のお姉さんたちとお母さんは、キャッキャと大はしゃぎです。
その様子をうらやましそうに見ていたシンデレラに、上のお姉さんが言いました。
「シンデレラ。お前も、舞踏会に行きたいと思っているの?」
「まあ、お姉さまは、わたしをからかっていらっしゃるのね。わたしのような者が、どうして舞踏会に行かれるものですか」
シンデレラの言葉を聞いて、下のお姉さんが笑います。
「あははは。それはそうよね。灰だらけの娘が舞踏会なんかに行ったら、さぞみんなの笑いものなるでしょうからね」
「・・・ええ、そうですね」
シンデレラは涙をこらえると、ニッコリと無理に笑顔を作って舞踏会に行くお姉さんたちを見送りました。
お姉さんたちが舞踏会に行ってしまうと、シンデレラはとても悲しくなってシクシクと泣き出しました。
「ああ、本当はわたしも、舞踏会に行きたいの。王子さまに、お会いしたいの」
でも、シンデレラのボロボロの服では、舞踏会どころかお城に入る事も許されません。
その時、どこからか声がしました。
「泣くのはおよし、シンデレラ」
「・・・? だれ?」
するとシンデレラの目の前に、魔法のつえを持った妖精(ようせい)のおばあさんが現れました。
「シンデレラ。お前はつらい事があっても、いつも笑顔でがんばる良い子ですね。
そのごほうびに、わたしが舞踏会へ行かせてあげましょう」
「本当に?」
「ええ、本当ですよ。ではまず、シンデレラ、畑でカボチャを取っておいで」
シンデレラが畑からカボチャを取ってくると、妖精は魔法のつえで、コツコツコツとカボチャを三度叩きました。
するとそのカボチャがどんどん大きくなり、何と黄金の馬車(ばしゃ)になったではありませんか。
「まあ、すてきな馬車」
おどろくシンデレラに、妖精が得意そうに言います。
「どう、なかなかのものでしょう。
でも、魔法はまだまだこれからよ。
さて、馬車を引くには、馬が必要ね。
その馬は、どこにいるのかしら?
・・・ああ、ネズミ捕りには、ハツカネズミが六匹ね」
妖精はネズミ捕りからハツカネズミを取り出すと、魔法のつえでコツ、コツ、コツと、一匹ずつハツカネズミの頭をさわりました。
するとハツカネズミはみるみるうちに、立派な白馬になりました。
別のネズミ捕りには、大きな灰色ネズミが一匹いました。
「このネズミは・・・」
妖精が魔法のつえで灰色のネズミの頭をさわると、今度は立派なおひげをはやした太っちょ御者(ぎょしゃ→馬車を操る人)に早変わりです。
「シンデレラ、次はトカゲを六匹集めておくれ」
「はい」
シンデレラが集めたトカゲは、魔法のつえでピカピカの制服を着たお供の人になりました。
「ほらね。馬車に、白馬に、御者に、お供。
さあシンデレラ、これで舞踏会に行く仕度が出来たわよ」
「うれしい。ありがとう。・・・でも、こんなドレスじゃ」
「うん? あらあら、忘れていたわ」
妖精が魔法のつえを一振りすると、みすぼらしいシンデレラの服が、たちまち光輝く純白の美しいドレスに変わりました。
そして妖精は、小さくて素敵なガラスのクツもくれました。
「さあ、楽しんでおいでシンデレラ。
でも、わたしの魔法は十二時までしか続かないから、それを忘れないでね」
「はい、行ってきます」
お城の大広間には美しいドレスを着た大勢の娘たちがいて、みんな王子さまに気に入られて未来のお姫さまになろうとがんばっています。
そこへ、六頭の白馬がひく、黄金の馬車に乗ったシンデレラが現れました。
シンデレラが大広間に入ると、誰もがそのあまりの美しさに見とれて、あたりがシーンと静まりました。
それに気づいた王子さまが、シンデレラの前に進み出ました。
「よろしければ、ぼくと踊っていただけませんか?」
シンデレラは、ダンスがとても上手でした。
シンデレラをとても気に入った王子さまは、ひとときもシンデレラの手を離しません。
夢の様な楽しい時間は、あっという間に過ぎて、気がつくと十二時十五分前です。
「あっ、いけない。・・・おやすみなさい、王子さま」
シンデレラはていねいにおじぎをすると、急いで大広間を出て行きました。
ですが、あわてたひょうしにガラスのクツが階段にひっかかって、ガラスのクツがぬげてしまいました。
時計を見ると、十二時まであと五分です。
もうすぐ魔法がとけてしまうので、ガラスのクツを取りに戻る時間はありません。
シンデレラは待っていた馬車に飛び乗ると、急いで家へ帰りました。
シンデレラの後を追って来た王子さまは、落ちていたガラスのクツをひろうと王さまに言いました。
「ぼくは、このガラスのクツの持ち主の娘と結婚します」
次の日から、お城の使いが国中を駆け回り、手がかりのガラスのクツが足にぴったり合う娘を探しました。
でも、そのガラスのクツは妖精がシンデレラの為だけに作った物なので、他の人がはいても大きすぎたり小さすぎたりと、ぴったり合う人は一人もいませんでした。
やがてお城の使いは、シンデレラの家にもやって来ました。
「さあ、娘たち。このクツが足に入れば、あなたたちは王子さまのお嫁さんよ」
「はい。お母さま」
二人のお姉さんたちはガラスのクツに足をギュウギュウと押し込みましたが、二人の足は大きかったので、どう頑張っても小さなガラスのクツには入りません。
「残念ながら、この家には昨日の娘はいないようだな」
そう言って、お城の使いが帰ろうとした時、シンデレラが現れて言いました。
「わたしもはいてみて、いいでしょうか?」
それを聞いた二人のお姉さんたちは、大笑いしました。
「何を、バカな事を言っているの」
「そうよ、あたしたちにも入らないのに、あんたなんかに、・・・あっ!」
シンデレラがはいてみると、ガラスのクツはピッタリです。
二人のお姉さんたちもお母さんも、驚きのあまり口もきけません。
するとそこへ、あの時の妖精が現れました。
「あらあら、わたしの出番ね」
妖精が魔法のつえを一振りすると、シンデレラのみすぼらしい服が、たちまち昨日の光輝く純白のドレスに変わりました。
「あのシンデレラが、昨日の!?」
昨日の黄金の馬車でやって来た美しい娘がシンデレラだった事を知って、お母さんと二人のお姉さんたちはヘナヘナと腰を抜かしてしまいました。
「おおっ、王子さまの心を射貫かれたお嬢さまは、あなたでしたか。
さあ、未来のお姫さま。
お城で、王さまと王子さまがお待ちですよ」
お城の使いの言葉に、二人のお姉さんとお母さんの顔が真っ青になりました。
シンデレラが王子さまと結婚すれば、シンデレラはこの国のお姫さまになります。
二人のお姉さんとお母さんは、今までシンデレラにひどい事ばかりしてきたので、このままではお姫さまになったシンデレラに仕返しをされて、この国を追い出されるかもしれません。
いいえ。
悪くすれば、三人は死刑になるでしょう。
三人はあわてて、今までシンデレラにひどい事をしたのを謝りました。
するとシンデレラは三人の手を取って、ニッコリ笑って言いました。
「今までの事は、何とも思っていないわ。でも、これからはやさしくしてね」
そしてシンデレラはお城の使いと一緒にお城へ行くと、王子さまと結婚してこの国のお姫さまとなりました。
さて、シンデレラと王子さまの結婚式には、二人のお姉さんたちも招待されていました。
お姫さまとなったシンデレラは、大勢のお客の中から二人のお姉さんたちを見つけると、二人に近寄って二人をやさしく抱きしめました。
そして招待客の若い貴族たちに、二人のお姉さんを紹介してあげました。
この事がきっかけで、お姉さんたちは若い貴族と結婚をして、二人とも貴族になりました。
シンデレラは姿形が美しいだけでなく、とても心優しい娘です。
そんなシンデレラだからこそ、妖精のおばあさんはシンデレラに素敵な贈り物をしてくれたのです。
おしまい
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