4月19日の世界の昔話
トウモロコシドロボウ
メキシコの昔話 → 国情報
むかしむかし、メキシコのある村に、お金持のお百姓がいました。
お百姓は広いトウモロコシ畑を持っていて、毎年、たくさんの卜ウモロコシをとり入れました。
ところがある年、トウモ口コシ畑にドロボウがはいったのです。
さて、このお百姓には、三人の息子がおりました。
一番上の息子は、なまけものです。
二番目の息子は、いばりやで、いつも人をバカにしていました。
三番目の息子は、どういう子どもか、よくわかりませんでした。
お百姓は、三人の息子をよんで、
「だれでもいい。ドロボウを見つけてくれ。見つけたものに、わしの財産(ざいさん)をゆずろう」
と、いいました。
まず、一番上の息子が畑ヘいきました。
息子は、ごちそうをつめたカゴを持って、鉄砲(てっぽう)を肩にかけて、プラリプラリとあくびをしながらでかけました。
庭の井戸(いど)までくると、
「ちょっとぐらい、ねむってもだいじょうぶだろう」
と、いって、腰をおろしました。
そして、すぐにいびきをかいて、ねむってしまいましたが、やがて、
「わたしを、トウモロコシ畑ヘつれていってください。ドロボウをつかまえるおてつだいをします」
と、いう、カエルの声で目をさましました。
「なんだと。このきたならしい、ろくでなしめ。おまえなんかに、ドロボウがつかまるものか」
と、いって、息子はカエルを、井戸の中へ投げこんでしまいました。
それから、トウモロコシ畑へでかけました。
けれどもまた、いねむりをはじめました。
夜があけて、目がさめたときには、トウモロコシはもうぬすまれていました。
こんどは、二番目の息子の番です。
二番目の息子は、マメをつめたカゴとヒョウタンを持って出かけました。
井戸まできて、ヒョウタンに水をくもうとしたとき、カエルが近づいてきていいました。
「わたしを、トウモロコシ畑ヘつれていってください。ドロボウをつかまえるおてつだいをしますから」
息子はビックリして、ヒョウタンをおとしそうになりました。
「おい、だまれ。おどかすな」
と、いって、カエルにかまわずいってしまいました。
そしてトウモロコシ畑にすわりこんで、ドロボウをまちました。
まもなく、鳥の羽ばたきが聞こえました。
尾のながい、きれいな鳥が、月のかがやく空にあらわれたかと思うと、スーッと、トウモロコシ畑におりてきました。
これこそ、ドロボウにちがいありません。
二番目の息子は、鉄砲のねらいをさだめて、
ズドン!
と、うちました。
鳥はさけび声をあげてにげていき、あとには羽が二枚のこりました。
にいさんは羽をひろいあげて、朝になるまでまちました。
けれども鳥は、それきりあらわれませんでした。
二番目の息子も、ドロボウをつかまえることはできませんでした。
つぎに三番目の息子が、ドロボウをつかまえにいきたいと、いいだしました。
「おれにできなかったんだ。おまえにできるはずがないじゃないか」
と、一番上のにいさんがいいました。
それでも三番目の息子は、パンだけ持ってでかけました。
井戸までくると、腰をおろしてパンをたべました。
すると、
「こんにちは」
と、カエルの声がしました。
息子は、カエルを手のひらにのせて、
「パンがほしいのかい? とても、おいしく焼けてるよ」
カエルはパンをもらって、たベおわるといいました。
「わたしを、トウモロコシ畑ヘつれていってください。おてつだいしますよ」
「ああ、いいとも。いっしょにおいで」
と、三番目の息子はいいました。
するとカエルがいいました。
「この井戸は魔法の井戸です。この中に、なんでもねがいごとをいってごらんなさい。きっと、かなえられますよ」
三番目の息子は、井戸の中へ、
「トウモロコシドロボウが、つかまえられますように。美しいお嫁さんが、きてくれますように。そして、まどがいっぱいついている家に、住めますように」
と、ねがいごとをいいました。
三番目の息子とカエルは、いっしょにトウモロコシ畑ヘいきました。
まもなく、美しい鳥がトウモロコシ畑にまいおりてきました。
息子は鉄砲をむけて、その鳥をうとうとしましたが、
「あっ、うってはいけません!」
と、カエルがさけびました。
三番目の息子は、鉄砲を下におきました。
すると美しい鳥は、頭の上を飛びながら、
「わたしは、魔法をかけられて鳥になった娘です。おなかがすいて、トウモロコシをいただきました」
と、うたいました。
カエルがケロケロと歌をうたうと、美しい鳥が、いつのまにかきれいな娘のすがたにかわりました。
「さあ、あなたのお嫁さんですよ」
と、カエルがいいました。
三番目の息子は、娘の手をとって、お父さんのところへ帰りました。
するとどうでしょう。
お父さんの家のとなりに、まどのたくさんついている、大きな家がたっているではありませんか。
「さあ、これがあなたの家ですよ」
と、カエルがいいました。
三番目の息子がお父さんのところヘいくと、一番上のにいさんは、
「こんなことなら、カエルを井戸ヘ投げこまなきゃよかった」
と、いって、くやしがりました。
二番目のにいさんは、
「カエルの歌を、聞いてやるんだったなあ」
と、くやしがりました。
お父さんはやくそくどおり、三番目の息子に財産をやりました。
三番目の息子は、美しいお嫁さんとカエルといっしょに、たのしくくらしました。
おしまい
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