5月2日の世界の昔話
アリババと四十人の盗賊
千夜一夜物語 → 詳細
むかしむかし、ぺルシアに、カシムとアリババという兄弟がいました。
兄のカシムはたいそうお金持ちで、弟のアリババは貧乏(びんぼう)なきこりです。
ある日、アリババがロバをつれて森へいくと、たくさんの馬の足音が聞こえてきました。
見ると、馬に乗った男たちが近づいてきます。
(おそろしい顔をしている。きっと、悪いやつらにちがいない)
アリババはロバをつれて、あわてて物かげにかくれました。
そっと数えると、男たちは四十人います。
やがて親分(おやぶん)が、岩のまえにたっていいました。
「ひらけ、ゴマ!」
すると、大きな岩がスーとひらいたのです。
男たちはほらあなの中に入ると、もっていた荷物をおいて、また出てきました。
「とじろ、ゴマ!」
親分がさけぶと、岩はスーと、とじました。
男たちは馬に乗ると、走りさっていきました。
「これはすごい、魔法(まほう)の呪文(じゅもん)で岩がうごくんだ」
アリババは、さっそくまねをしてみました。
「ひらけ、ゴマ!」
さっきと同じようにように、岩がスーとひらきました。
ほらあなに入ったアリババは、目を見はりました。
「これはすごい! 宝の山だ! そうか、ここは盗賊(とうぞく)たちの宝のかくし場所なんだ」
アリババは金貨(きんか)をロバにつむと、いそいで家に帰りました。
その夜、アリババはカシムの家に、マスをかりにいきました。
(貧乏人が、何をはかるのだろう?)
そう思ったカシムは、マスのすみっこに、こっそりとのりをぬっておきました。
そしてアリババから返ってきたマスには、のりにくっついた金貨が一まいはりついていたのです。
カシムは、すぐにアリババの家にいきました。
「おい、この金貨をどこで手に入れたんだ! 言わないと、役人にいいつけるぞ!」
しかたなくアリババは、宝のありかを教えました。
(これはいいことを聞いた。よし、その宝をひとりじめにしてやろう)
カシムはロバをひいて岩山へ出かけていくと、教えられたとおりに、
「ひらけ、ゴマ!」
と、いいました。
スーとひらいた岩の中に入っていくと、そこには目がくらみそうなほどの宝が山づみにされています。
「そうだ、岩のとびらをとじてから、ゆっくりとふくろにつめこむとしよう」
カシムが岩のまえで、
「とじろ、ゴマ!」
と、いうと、岩はスーととじました。
「よしよし、思うぞんぶん、宝をつめこむぞ」
カシムは夢中で、宝をふくろにつめこみました。
ところがたいヘんなことに、外に出ようと岩のまえに立ったのですが、出るためのおまじないをわすれてしまったのです。
「ひらけ、マメ。・・・ひらけ、ムギ。・・・ひらけ、トウモロコシ。・・・ひらけ、カボチャ」
オロオロしているうちに、盗賊たちがもどってきてしまいました。
「こそドロめ、盗賊からドロボウするとはとんでもないやつだ!」
カシムは、おこった盗賊たちに殺されてしまいました。
よく似たお話しが、グリム童話にもあります。
→ ジメリのお山
おしまい
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