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8月18日の世界の昔話

ほら吹き男爵 外套になった狂犬

ほら吹き男爵 コートになった狂犬
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話について

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
 今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。

 これは去年の冬の話だが、ペテルブルグのせまい横町で狂犬に追いかけられた時は、生きたここちがしなかったぞ。
 むろん町中だから、鉄砲など持ち合わせていない。
 なに? いつかのオオカミの様に口にげんこつを突っ込んで、裏返しにしたらどうかだって?
 とんでもない。
 こんな町中であんな事をすれば、ご婦人たちに嫌われてしまうではないか。
 そこでわがはいは、逃げる事にしたのだ。
 とは言っても、ただ逃げただけでは追いつかれるので、わがはいはコートを脱ぐと、それを狂犬に投げつけてやった。
 そして狂犬がコートに気を取られている間に、わがはいはやっとの事で、わが家へと駆け込んだのだ。
 そしてコートは後で下男に拾ってこさせ、ほかの洋服と一緒に洋服だんすの中にかけさせた。

 さて、あくる日の事だ。
「だんなさま、大変です! コートが、暴れまわっています!」
 下男のけたたましい声に驚いて行ってみると、なるほど、昨日のコートが暴れ狂って、わがはいの服を残らず、ずたずたに引きちぎっている。
「なんとも、不思議な事があるものだ」
 あっけに取られて見ていると、コートの下からあの狂犬が首を出して、
 ウーッ!
と、うなったのだ。
 理由がわかれば、なんの事はない。
 狂犬がコートにくるまっているのを知らずに、下男がコートを狂犬ごと拾ってきて、洋服だんすにしまい込んだというわけだ。
 もちろん狂犬はすぐにやっつけたが、そそっかしい下男のおかげで、多くの服がボロボロになってしまったぞ。

 『服をたんすにしまう時は、服の中に何か入っていないか、よく確かめてからしまおう』
 これが、今日の教訓だ。

 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

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