8月24日の世界の昔話
イラスト 龍之進
最高の宝物
龍之進のオリジナル童話
昔々あるところに、宝物を集めるのが大好きな男がいました。
男は世界中を旅してまわり、キラキラ光る宝石や、金でできた像や、美しい布などを集めていたのです。
ある日、旅の途中で日が暮れてしまったので、
男は近くにあった村の小さな家に泊めてもらうことになりました。
「何もありませんが、どうぞゆっくりしていって下さい」
その家に住んでいた青年は、粗末な皿に入れたスープを男に差し出しました。
男は愛想笑いをしながら、心の中で呟きました。
「本当に何もないところだな。家はボロボロだし、この皿だって、まるでガラクタじゃないか」
男はスープを飲みながら、自分が集めた数々の宝物のことを、青年に自慢し始めました。 青年は黙って聞いていましたが、やがてこんなことを言いました。
「この村にも、素敵な宝物がありますよ」
「何だって。本当かい?」
「ええ、本当です」
「ようし、それなら、その宝物とやらを見せてもらおうじゃないか」
「分かりました。では、明日の夕方まで待って下さい」
どうして明日の夕方まで待たなければならないのか、男は不思議に思いましたが、とにかく青年の言うとおりにすることにしました。
次の日の夕方、青年は男を村のはずれに連れていきました。
そこには家もほとんどなく、空が広々と感じられます。
青年は、遠くに見える山の方を指さしました。
「ほら、見て下さい」
青年の指さす方角を見た男は、思わず息を飲みました。
どこまでも広がる空は、赤色や橙色や黄色や様々な色で見事に染められ、紫色や桜色の雲がたなびいていました。
そしてその中に、黒々とした山の姿が浮かび上がって見えました。
男はしばらく、何か言うのも忘れて、その景色を見つめていました。
やがて男の目から、一筋の涙が流れ落ちました。
「どうでしたか。きれいだったでしょう」
家に戻る道すがら、青年はにっこり笑って男に話しかけました。
男は、何も言わずにうなずきました。
夕焼けが、あんなにいろいろな色をしていたなんて。
桜色の雲が、あるなんて。
山があんなに、厳かな姿を見せるなんて…。
「素敵な宝物でしょう?」
青年は、再び男に話しかけました。
男は、青年の方を向き、こう答えました。
「ああ。最高の宝物だよ」
おしまい
このお話しとイラストは、自作のイラスト・フリー素材を公開している三絶堂の運営者「龍之進」さんのオリジナル作品です。
おしまい
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