9月7日の世界の昔話
ほら吹き男爵 忠犬ダイアナ
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話について
わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。
ある時、わがはいは公用で旅に出かけた。
そして半月後に帰って来たのだが、いつも元気に出迎える愛犬のダイアナの姿が見えない。
「おや? ダイアナは、どうした?」
下男に聞くと、
「はあ? ダイアナはだんなさまが、旅に連れておいでになったのではなかったのですか?」
と、不思議そうに言うではないか。
もちろん、わがはいが連れて行ったのなら、こんな事を聞くはずがない。
「大変だ。すぐに、探すんだ!」
わがはいは、さっそく下男にダイナを探させたが、ダイアナはどこにもいなかった。
「・・・そう言えば」
わがはいは旅の前に妻とダイアナを連れてシャコ狩りに行き、妻が野原の古井戸に落ちて大騒ぎした事を思い出した。
考えてみれば、あの古井戸の事件の時に、ダイアナはいなかった。
もしいたとしたら、あのかしこい犬は妻を古井戸から救い出す時に手伝ってくれているはずだ。
「ひょっとすると、まだシャコの見張りをがんばっているのではないか?」
そこでさっそく野原に行くと、やっぱりいた。
半月前においてきぼりにした場所で、わがはいの愛犬ダイアナは、あいかわらずシャコの群れをにらんでいるではないか。
そして、わがはいの顔を見るとうれしそうに、
ワン、ワン!
と、鳴いた。
その主人思いのいじらしさに、わがはいは涙をこぼしたぞ。
「ダイアナ!」
わがはいはダイアナをしっかりと抱きしめると、この犬の好意に報いる為にと、たった一発の玉で二十五羽のシャコを仕留めてやった。
もちろんこのシャコは、みんなダノアナにほうびとしてやった。
しかしダイアナは歩く事も出来ないほど腹を空かして疲れ果てていたので、わがはいは自分の代わりにダイアナを馬に乗せて、手づなをひいて家に帰った。
それからダイアナは数日の間に、わがはいの手厚い看護で元通りの元気になったのだ。
『愛犬をどこかへ連れて行ったなら、必ず連れ帰ってやろう』
それが、今日の教訓だ。
では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい
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