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第 10話
意地悪ギツネと利口なウサギ
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 : 神栖星花研究所 「神栖星花研究所」
キツネは、自分の尻尾がとても自慢でした。
尻尾は先になるほど大きくなっていて、とても強そうに見えるので、他の動物たちはよくオオカミと間違えて顔色変えて逃げて行きました。
キツネはそれが面白くて、その日も弱虫の動物たちを怖がらせてやろうと野原へ出かけていきました。
すると向こうから、ウサギがピョンピョンと跳ねながらやって来ました。
「よし、ウサギの奴を、一つからかってやろう」
キツネは自慢の尻尾を振って、見せびらかしながら、
「やあ、ウサギくん」
と、呼び止めました。
でもウサギは、
「やあ、キツネくん、こんにちは」
と、平気で挨拶をしました。
「おや? ウサギくん、よく逃げないね。森の動物たちはぼくの尻尾を見ると、みんな怖がって逃げて行くのに」
キツネは、がっかりして言いました。
「そうかい。でも、ぼくだってきみと同じだよ。ぼくの長い耳を見ると、みんな怖がって逃げて行くんだよ」
「うそつけ! きみの耳なんか、怖がる者がいるものか!」
「本当さ。みんな逃げて行くぜ」
「きみを見て逃げ出すのは、トカゲか小鳥くらいのものさ。きみの耳なんか、ちっとも怖くないじゃないか」
「だって、逃げて行くぜ。ニワトリだって、ヒツジだって」
「それが本当なら、見たいものだね」
「いいよ。見せてあげるから、一緒においでよ」
そこで二匹は、まずニワトリの所へ行きました。
ニワトリたちは、囲いの中で仲よくエサをついばんでいましたが、ウサギとキツネの姿を見ると怖がって、羽をバタバタさせて飛び上がったり、悲鳴を上げてあっちこっちと逃げ回るのでした。
それを見たキツネは、
「変だな、きみの耳が、そんなに怖いかねえ」
と、首を傾げましたが、
「まあ、ニワトリは、慌て者だからね」
と、言いました。
今度は、ヒツジの所へ行きました。
ヒツジたちは大きな囲いの中でメエーメエーと鳴きながら、のんびり遊んでいましたが、二匹の姿を見ると大騒ぎになりました。
逃げ様として、互いにぶつかったり、跳ねたり、転んだりしてまごつくばかりです。
それでキツネも、
「本当だ。本当に、きみに耳を見て怖がっている。うたがってごめんね」
と、謝り、それからはウサギをバカにしなくなりました。
でも本当は、動物たちが怖がったのはウサギの方でなく、一緒にいたキツネの方だったのです。
賢い人は他の人をうまく利用して、自分の手柄の様に見せるものです。
おしまい
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