福娘童話集 > 日本昔話 > その他の日本昔話 >働き者になった若者
第 2話
働き者になった若者
日本昔話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作 : 朗読ヒツジのメイチャンネル
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 ごえもん
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「【やさしく朗読】ま る / M A R U」
むかしむかし、働くのが大嫌いな若者がいました。
結婚をしても良い年頃ですが、働かずに家でゴロゴロしているので結婚する相手が見つかりません。
怒ったお父さんとお母さんは、息子を家から追い出してしまいました。
「あー、困ったな。金もなければ食べ物もねえ。そろそろ心を入れ替えて働くとするか」
若者が一軒の農家の前を通りかかると、かきねの中から、
「えいさ、えいさ」
と、かけ声が聞こえてきました。
中をのぞいてみると、家の人が庭の畑でゴボウを抜いているところでした。
(ゴボウ抜きか。あれなら出来るかも)
そう思った若者は、家の人に言いました。
「どうぞ、私をやとってください。ここで働かせてください」
「よし、ではゴボウを抜くのを手伝ってくれ」
若者はさっそく、畑のゴボウ抜きを手伝うことになりました。
でも、一本だけ大きなゴボウがあって、なかなか抜けません。
「うーん! うーーん!」
若者が力一杯ゴボウを引っ張ると、ゴボウはスポーン!と抜けましたが、抜けたひょうしに若者は空高く飛んでしまいました。
野を越え山を越え、若者が落ちた先は大阪の桶屋町です。
若者は一軒の桶屋に行って、前と同じように頼みました。
「どうぞ、私をやとってください。ここで働かせてください」
「よし、ではおけのたがをはめる仕事をやろう」
おけのたがとは、おけに使っている板を固定する帯のような物で、竹などをらせん状に束ねた物です。
若者は桶屋の主人に教えてもらった通り、おけのたがを次々とはめていきました。
と、その時、おけのたががバチンと切れて、ものすごい勢いではじけました。
とても大きなおけのたがだったので、若者はまた空高く飛んでしまいました。
そして今度は、京都の傘屋町に落ちました。
若者は一軒の傘屋に行くと、前と同じように頼みました。
「どうぞ、私をやとってください。ここで働かせてください」
「よし、傘を干す仕事ををやろう」
当時の傘は、竹や木の骨組みに紙を貼って作ります。
ただの紙では雨に濡れて破れてしまうので、亜麻仁油(アマニ油)という油を塗っては干して乾かし、塗っては干して乾かしを繰り返して、雨にも負けない丈夫な傘に仕上げます。
若者の仕事は、亜麻仁油を塗った傘を日に干すことです。
その日はちょうど、お金持ちから注文された大きな傘を干していました。
傘が乾いたので若者が傘を取り込もうとした時、突然のつむじ風で、傘の柄を掴んでいた若者は傘と一緒に空高く飛んでしまいました。
そして行きついた先が、雲の上にある雷さまの家だったのです。
雷さまの家をのぞいてみると、雷さまの奥さんが糸をつむいでいました。
若者は、前と同じ様に頼みました。
「どうぞ、私をやとってください。ここで働かせてください」
突然やって来た人間に奥さんはびっくりしましたが、若者から今までの話を聞いた奥さんは言いました。
「ここの主人は、雷さまですよ。それでもかまいませんか?」
「はい、かまいません。ここで働かせてください」
「では、主人が仕事から帰るまでお待ちなさい」
やがて雷さまが帰って来たので、奥さんがわけを話しました。
すると雷さまは意外と良い人で、若者をやとうことにしました。
「よし、雨を降らす手伝いをさせてやろう」
若者は雷さまから水がめを受け取ると、その水がめの水を数滴、地上にたらす様に言われました。
雷さまの水がめには不思議な水が入っており、数滴たらすだけで地上は大雨になります。
若者は、その仕事が面白くてたまりません。
「そら、夕立だ! こっちは大雨だ!」
調子に乗って雨を降らせているうちに、若者はうっかり雲から足を踏み外してしまいました。
「うわーー!」
そして海に落ちた若者は海の底まで沈んでいき、竜宮城にたどり着きました。
若者はここでも、前と同じ様に頼みました。
「どうぞ、私をやとってください。ここで働かせてください」
そして若者は、竜宮城の庭を掃除する仕事をもらいました。
若者が仕事をするとき、先輩の掃除人にこんな事を言われました。
「時々人間が釣り糸をたらしてきますが、決して釣り糸のエサを食べてはいけませんよ」
「あははは、大丈夫。私は人間だから、魚のエサなんて食べませんよ」
若者は笑いながらそう言うと、庭の掃除を始めました。
しばらくすると先輩の掃除人が言っていた様に、上の方から釣り糸が降りてきました。
釣り糸の針には、魚のエサが付いています。
「はん。こんな物は食べないよ」
若者はそう言いましたが、不思議な事に海の中にいると魚のエサがごちそうに見えてくるのです。
若者は我慢が出来なくなって、魚のエサをパクりと食べてしまいました。
そのとたん糸が引っ張られて、若者の体は上へ上へと引き上げられます。
そしてそのまま、舟の中に釣り上げられたのです。
若者を釣り上げた漁師は、人間が釣れたのでびっくりです。
「人間だ! いや、これは人魚か?」
若者は釣り針を口から外してもらうと、漁師に今までの事を話しました。
漁師は若者の言葉を信じてくれて、若者を親元へと届けてくれました。
こうして家に帰ってきた若者は、今まで色々な仕事をして仕事の楽しさを知ったので、それからは村一番の働き者になり、可愛いお嫁さんをもらって幸せに暮しました。
おしまい
|