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第 8話
タコとり長兵衛
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
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制作 : 朗読ヒツジのメイチャンネル
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投稿者 ごえもん
むかしむかし、あるところに、まい日タコをとり、それを売ってくらしている、タコとり長兵衛(ちょうべえ)という男がいました。
ある日、ずっと遠くのにぎやかな町まで、タコ売りにいったところ、大きな家の前に『おれの家のむすめをもらいたいとおもう人は、だれでもなかに入ってこい』という、かんばんを見つけました。
長兵衛は、
「おれのようなものがいっても、あいてになってくれるだろうか?」
と、思いましたが、そのまま入っていきました。
「あの、かんばんをみて、まいりました」
すると、おくから番頭(ばんとう→詳細)がでてきて、
「おまえは、なんていう名前の人だ?」
「おれは、あしのくらの千軒町(せんげんちょう)からきた、タコとり長兵衛というもの。そこは、ねていて朝日夕日をおがむにいいところだ」
「それは、たいしたところだなあ」
と、おくにとりついでくれました。
親たちはそれをきいて、むすめをよび、
「ずいぶん遠いところのようだが、おまえはどうするつもりかな」
と、ききました。
すると、いつもへんじをしなかったむすめが、
「いくことにする」
と、いったのです。
長兵衛はよろこんで、
「いついつかの、いつごろむかえにくるから」
と、やくそくして、その日はかえっていきました。
いよいよその日になりましたが、長兵衛からは、なんのたよりもありません。
父はしかたなく、むすめと荷物を車にのせ、みんなで海ぞいの道を歩いていきました。
そして、道とおる人に、
「あしのくらの千軒町は、ここからなんぼぐらいあるべか」
と、ききました。
「そこは、ここからまだ三里も四里(一里は、約四キロメートル)もあって、なんにもないたいへんなところだ、もどったほうがよい」
むすめをおくってきた人たちは、それをきいて、
「そんなに遠いところまで、いっしょについていかれねえ。おまえももどったほうがよい」
と、いいましたが、むすめは、
「おれはいくとけっしんして、へんじをしてしまったから、ひとりでもいく」
と、いって、おくってきた人たちと、わかれることにしました。
そして、たずねたずねして、やっと夜になってつきました。
そこは千軒町といっても、海べに家は一けんしかありません。
その家も、四方のかべもないあばら家です。
たしかにこれなら、ねていて朝日夕日をおがむにいいわけです。
長兵衛は、
「よくきてくれたなあ。こういう遠いところだから、とてもきてもらえないとおもっていた。むかえにもでなくて、すまなかった」
と、いって、たいそうよろこびました。
こうしてむすめは、長兵衛のあねちゃ(→奥さん)になりました。
嫁をもらった長兵衛は、いっそうタコとりにせいだして、町に売りに歩きました。
ある日、近くの町にいってみると、大きいあき家に、
《この家を買う人があれば、三十文(千円ほど)で売る》
と、たてふだがたっていました。
長兵衛は心のなかで、「こりゃあやすい」とおもいましたが、とおりがかりの人が、
「この家は、ばけものやしきだよ」
と、教えてくれたので、そのまま家にもどってきました。
「町に三十文で売るという、大きな家があったども、ばけものやしきだというし、三十文の銭こもねくて、買えねかった。ざんねんだなあ」
それきいたあねちゃは、
「ばけものやしきだって、なんもおっかなくねえもんだ。おらのさいふに三十文の銭こはあるから、今からいって買ってこい」
と、いって、おくから三十文を持ってきました。
そして、二人はその大きい家にひっこしたのです。
長兵衛はまい日、朝早くからタコとりにいくので、まい日あねちゃは、大きな家でるすばんをして、はり仕事をしていました。
ある日、とつぜんおくざしきのほうから、
ドンドン、ドンドン
と、ゆか板ならして、六尺(百八十センチ)の坊主があねちゃの前に、でんとたちふさがりました。
さすがのあねちゃもビックリして、ブルブルふるえていましたが、だまって知らないふりをして、はり仕事をつづけました。
すると、しばらくして、
ドンドン、ドンドン!
と、どこかにいってしまいました。
でも、またすぐ、
ドンドン、ドンドン
と、音がして、こんどは三つ目の坊主が出てきて、あねちゃをジッと見つめています。
あねちゃは目をつぶって、知らないふりをしていたら、やがてそれも、
ドンドンと、行ってしまいました。
あねちゃがホッとしているところに、また、おくのほうから、パタパタと足音がして、こんどは年とったおばあさんが、赤い手ぬぐいをかぶってでてきました。
そのおばあさんは、あねちゃのそばにベッタリとくっついて、
「あねちゃ、おれたちはばけものではねえんだよ。じつは金の精だ。この家のなかにある金をわたしたくて、今までになんどもなんどもでてきたが、ひっこしてきた人たちは、みなにげていってしまった。おまえにその金をみなわたすから、おれについてこい」
と、いって、おくのざしきにつれていきました。
そこであねちゃが、おばあさんにいわれてゆか板をはがすと、大きなかめがでてきました。
おばあさんが、
「ふたをとってみれ」
と、いうので、ふたをとってみたら、なかにはピカピカひかる小判がいっぱい入っていました。
「なんとまあ!」
あねちゃがビックリしているまに、おばあさんは、いなくなっていました。
タコをとってかえってきた長兵衛は、小判のいっぱい入ったかめをみて大よろこび。
二人は大金持になり、それから一生なかよく楽しくくらしたということです。
おしまい
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