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第 25話

五郎とかけわん

五郎とかけわん
日本昔話

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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

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制作 : 朗読ヒツジのメイチャンネル

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投稿者 ごえもん

 むかしむかし、太郎と次郎と五郎という三人の兄弟がいました。
 ある日、父親が三人に言いました。
「そろそろこの家を誰に継がせるか決める時期だが、誰に継がせるのが良いのか分からん。そこでお前たちはこれから三年の間、役に立つ事を習って来い。一番役に立つ事を覚えてきた者に家を継がせよう」
 そこで三人は、家を出て行きました。

 長男の太郎は、弓の名人に弟子入りをしました。
 次男の次郎は、えぼし作りの名人に弟子入りをしました。
 えぼしとは、偉い人のかぶる帽子の事です。
 三男の五郎は野原に住む貧乏なおばあさんと出会い、おばあさんが苦労をして生活しているのを知るとおばあさんの生活を助けるためにおばあさんと一緒に暮しました。
 三年間おばあさんの世話をした五郎は、おばあさんに小さなかけたおわんをもらいました。
(三年間働いたお礼が、かけたおわんか)
 五郎は家に帰る途中で、もらったかけわんを捨てました。
 ところがかけわんはゴロゴロと転がりながら、
「五郎待て、五郎待て」
と、五郎を追いかけてきて懐に飛び込んだのです。
 五郎は気味悪くなって、お寺の石段のすみにかけわんを置くと、重しに上から石をのせました。
 そして逃げるように走り出しますが、かけわんはゴロゴロと転がりながら、
「五郎待て、五郎待て」
と、五郎を追いかけてきて懐に飛び込んだのです。
(どうもこのかけわんには、不思議な力があるに違いない)
 そう思った五郎は、かけわんを持って家に帰りました。

 さて、五郎が家に帰ると、太郎も次郎もすでに戻っていました。
 父親は村の長者も呼んで、三人の息子が何を習って来たのかを尋ねました。
 まずは太郎が答えます。
「私は、弓を射ることを習って来ました」
 次に次郎も答えました。
「私は、えぼし織りを習ってまいりました」
 上の二人は立派な事を習っていましたが、五郎はおばあさんと一緒に暮していただけなので、何も習っていません。
 困った五郎が口をもごもごさせていると、懐に入れたかけわんが五郎の声で答えました。
「私は、泥棒を習って来ました」
「なんだと! よりにもよって、泥棒とは!」
 お父さんは怒りましたが、長者は笑いながら言いました。
「それなら五郎、今夜うちの屋敷から金箱を盗んでみなさい。見事盗めたら金箱をやろう。しかし盗めなかったら、泥棒としての罰を受けるのだぞ」
 五郎の代わりに、かけわんが答えました。
「分かりました。もし盗めなかったら、泥棒としての罰を受けましょう」

 その夜は雨でした。
 五郎は長者の屋敷の前で、ぼうぜんと立っています。
「どうしよう。おれ、泥棒なんてした事ないのに」
 長者の屋敷では、屋敷に入ってきた五郎をすぐに捕まえられる様に、明かりを付ける火打ち石や火吹き竹を持った使用人が屋敷を守っています。
 しかも雨が傘を打つ音がバラバラと響くので、五郎がどこにいるのかすぐに分かってしまいます。
 五郎は、懐のかけわんに尋ねました。
「おい、どうするんだ? このまま屋敷に入ったら、すぐに捕まってしまうぞ」
 すると懐のかけわんが、怒鳴るように言いました。
「おれを屋敷の中に放り込め!」
「うん、わかった」
 五郎がかけわんを屋敷に投げ込むと、かけわんは使用人たちが持っている火吹き竹を笛に変え、火打ち石を鐘に変えました。
 そしてかけわんは縄を見つけると、長者夫婦をあっと言う間にしばりあげてしまったのです。
「泥棒だ! 早く捕まえろ! 早く明かりをつけろ!」
 長者の言葉に使用人が火打ち石で明かりをつけようとしたところ、
♪チンチロチンチロリン。
と、火打ち石にすり替えられた鐘が鳴りました。
 そして使用人が火吹き竹を吹くと、火吹き竹は笛になっているので、
♪ピーヒョロ、ピーヒョロロ。
と賑やかに鳴りました。
♪チンチロチンチロリン。
♪ピーヒョロ、ピーヒョロロ。
 まるで、お祭りのような騒ぎです。
「何を遊んでいる! 早くつけろ、早くつけるんだ!」
 長者は早く明かりをつけろと言っているのですが、それを聞いた馬の番人は金箱を馬につけるのだと勘違いをして、大急ぎで馬に金箱をつけました。
「旦那さま、金箱を馬につけました」
 馬の番人が長者に伝えようとかけ出したその時、かけわんが馬のたづなを引いて屋敷の外へ飛び出したのです。
 突然屋敷から飛び出してきた金箱を乗せた馬とかけわんに、五郎は何が起こったか分からずおろおろとしています。
 そこへ、使用人に縄をといてもらった長者が使用人とともに現れました。
「なんと!」
 長者は悔しがりましたが、すぐにニッコリ笑うと五郎に言いました。
「五郎、見事じゃ! 約束通り、その金箱はお前にやろう。そしてお前が家を継げるよう、親父様にわしが口添えをしてやろう。だが、泥棒はこれっきりじゃぞ」

 その後、長者の口添えで五郎が家を継ぐことになったのですが、五郎は家を継ぐのを太郎と次郎にゆずり、長者にもらった金箱とかけわんを持って野原のおばあさんの所へ行きました。
 そしてかけわんとおばあさんと一緒に、幸せに暮したという事です。

おしまい

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