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第 35話

親切なおじいさん

親切なおじいさん

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

 むかしむかし、あるところに、とても親切なおじいさんとおばあさんが住んでいました。
 ある日の事、おじいさんが山の中を歩いていると、谷川の岸に出ました。
 その川の向こうで、
「あぶない、あぶない」
と、大声で呼ぶものがあります。
 おじいさんは、びっくりして、
「あぶないなら、助けてやろう」
と、声のする方を見ましたが、だれが呼んでいるのかわかりません。
 そこで、こっちから、
「おーい」
と、呼んでみましたが、返事はありません。
「おかしいな。谷川の水の音か、林の風の音を聞き違えたかな?」
 おじいさんはそう思って、その日は帰ることにしました。
 ところが次の日も、そこを通ると、
「あぶない、あぶない」
と、声がするのです。
 おじいさんは心配になって、あちこちを探してみましたが、誰一人見つかりません。
「誰だ。助けにきたぞー!」
 そう呼んでみても、返事はありません。
 おじいさんは、年のせいで聞き違いをしたかと思いました。

 さて、その次の日の事です。
 おじいさんは、今日こそ聞き違いをしないようにと、よく気をつけていました。
 すると、また声がします。
 今日は、本当にあぶなそうに聞こえました。
 おじいさんは、大急ぎで川を渡っていきました。
 しかし、だれが呼んでいるのかわかりません。
 あきらめて引き返そうとすると、今度は、すぐそばで、
「あぶない、あぶない、あぶない」
と、呼ぶ声がしました。
 見ると、それは一つのつぼで、今にも川の中へ落ちそうになっていました。
「そうか、あぶないとは、これのことだな」
 おじいさんは、急いでそのつぼを抱き起こしてやりました。
 すると、
「ありがとう」
と、つぼの中から、小さな声が聞こえました。
 おじいさんは中に何かいるのだろうと思って、つぼのふたをとってみたら、なんと中にはたくさんのお金が詰まっていたのです。
 それから、おじいさんとおばあさんは、そのお金で幸せに暮らす事が出来ました。

おしまい

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