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第 64話

賢くなる旅

賢くなる旅

 むかしむかし、あるところに、少し頭の弱い息子がいました。
 息子は結婚もせず、毎日ゴロゴロと酒ばかり飲んでいます。

 ある日の事、息子の父親がこんな事を思いました。
「全く、困った息子だ。
 むかしから『かわいい子には旅をさせよ』と言うが、こんな息子でも旅に出させれば一人前になって帰ってくるかもしれないな。
 ・・・うん、そうしよう」
 そこで父親は息子にわずかなお金を持たせて、息子を旅に出させました。

 息子があてもなくどんどん歩いて行くと、人々が集まって何かを話しています。
「長者さんの娘が、上洛(じょうらく→京都へ行く事)するそうだよ」
「ほう、上洛ですか」
「それも天子さまのお召しで都へ上るそうだ」
「それはすごい! これ以上のめでたい事はありませんな」
 これを聞いた息子は、
(なるほど、上る事を上洛というのだな)
と、思いました。

 それからまた歩いて行くと、うなぎ屋がうなぎをさばいているのに出会いました。
 その慣れた手つきに感心した息子が、うなぎ屋に言いました。
「全く、素晴らしいお手なみですね」
「おそれいりやす」
「あの、実はわたし、賢くなるために旅をしています。
 そこで一つ、うなぎのさばき方を説明してはもらえませんか?」
「ああ、いいですよ。まずはこの様に、魚頭(ぎょとう)を目打ちして動けないようにした後、・・・」
 うなぎ屋はうなぎのさばき方を詳しく説明してくれましたが、頭の弱い息子はほとんど覚えられず、ただ魚頭という言葉を聞いて、
(なるほど、あたまの事を魚頭というのだな)
と、思いました。

 さらに歩いて行くと、川のほとりで人々が騒いでいます。
「ほれ、また朱椀が流れてきたぞ」
「今度は朱膳だ」
 見ると川の上流から、赤いお椀や赤いお膳がぷかぷか流れてくるのでした。
 どうやら洗い物をしていて、うっかり流してしまった人がいるのでしょう。
 これを見た頭の弱い息子は、
(なるほど、赤い物を朱椀・朱膳というのだな)
と、思いました。

 こうして旅を終えた息子は、家に帰って父親に言いました。
「父上が旅に出してくださったおかげで、わたしは多くの事を学びました。ありがとうございます」
 息子がしっかりした口調でそう言うので、父親は目に涙を浮かべながら『旅に出してよかった』と思いました。

 ところが次の日の事、父親が庭の木に登っていて、うっかり足を滑らせて落ちてしまい、頭から血を出して倒れてしまったのです。
「大変だ! はやく使用人に言って、医者を呼んできてもらわないと」
 使用人に医者を呼びに行かせるには、怪我の状況を書いた物を持たさなければなりません。
 そこで頭の弱い息子は、次の様に書きました。
《父が柿の木に上洛し、中ごろより下洛し、大石に魚頭を打ち付けて、朱椀・朱膳に相成り候》

 これを見た医者は何の事か分からず、事情を使用人から聞いて大笑いしたという事です。

おしまい

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