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福娘童話集 > 日本昔話 > その他の日本昔話 >石割桜
第 72話
石割桜
むかしむかし、おさつという名の、それはそれは力の強い女の人がいました。
「男が女よりも強いだって? ははーん。あたしゃ、どんな男にも負けやしないよ」
おさつがあんまり力自慢をするので、ある時、噂を聞いた大男が力比べにやって来ました。
「お前か、女のくせに力自慢をしているのは。お前に男の本当の力を見せてやろう」
大男はそう言うと大きな岩を持ちあげて、ドスンと地面にたたき落としました。
地面には、大きな穴が出来ました。
「どんなもんだ」
高笑いする大男をおさつは鼻で笑い、大男の岩よりもっと大きな岩を持ちあげました。
そしてその岩を、空に向かって、
「えいっ!」
と、放り投げたのです。
おさつの投げた岩は飛んで飛んで、遠くにあるお城の庭にドシンと落ちました。
「何事だ!」
地震かと思って外に飛び出してきたお殿さまは、いきなりふって来た岩を見てカンカンに怒りました。
「この岩を投げた者を、ここへ呼べ!」
命令を受けた家来たちは、探し探しておさつを捕まえました。
さすがのおさつも、お城に連れて来られてしょんぼりです。
けれど、お殿さまが、
「投げたこの大岩を、日本中に知られる様な岩にしてみよ。見事に出来たら許してやろう」
と、言ったとたん、おさつは顔を輝かせました。
「それなら、簡単な事です。・・・えい!」
おさつはお殿さまの目の前で、その大岩をまっぷたつに叩き割りました。
そして庭の桜の木を引き抜くと、割れた岩の間にぽんと植えました。
すると不思議な事に、その桜の木はぐんぐんと岩の間に根を生やして、それは見事な桜の花を咲かせたのです。
「おおっ、見事! これを『石割桜』と名付けよう!」
お殿さまは飛びあがって喜び、おさつを許した上に、たくさんのほうびを与えたということです。
おしまい
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