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第 12話
ねしょんべんたろう
むかしむかし、あるところに、たろうという男の子がおかあさんといっしょにくらしていました。
たろうは、はたけしごとやおかあさんのおてつだいをいつもしてくれるので、おかあさんも大よろこびです。
そんなおかあさんが、ただひとつしんぱいしていることがあります。
それは、たろうが10さいになったいまでも、いつもあさおきたときにでっかいねしょんべんをおふとんにしてしまうことです。
きょうのあさも、たろうはおふとんにねしょんべんをしてしまいました。
いえのおにわにあるものほしには、たろうがやってしまったねしょんべんのおふとんがほされています。
たろうは、ふとんがほされているものほしのよこではずかしそうなひょうじょうをしています。
たろうはおふとんだけでなく、じぶんがみにつけているはらがけもねしょんべんでぬれています。
たろうは、まだねしょんべんがなおらないので、いつもはらがけ1まいだけですごしているのです。
「おっかあ、きょうもねしょんべんをやっちゃってごめんなさい」
「あらあら、たろうはきょうもねしょんべんたろうになっちゃったね。ねしょんべんはそのうちなおるからきにしなくていいのよ」
たろうがねしょんべんをしてしまったことをいうと、おかあさんはたろうをやさしいことばでなぐさめました。
たろうにとって、おかあさんはいつもやさしいけど、ねしょんべんをするたびに、おかあさんから「ねしょんべんたろう」といわれるのはかなりはずかしいようです。
「はやくおふとんがかわいてくれないかなあ」
たろうは、じぶんがやってしまったでっかいねしょんべんのおふとんを見ながらつぶやきました。
すると、とつぜんつよいかぜがふいてきました。
すると、ものほしにほされているたろうのねしょんべんふとんがかぜにとばされていきました。
たろうは、かぜにとばされたおふとんをおいかけていきました。
しかし、おふとんはかぜにのって山のほうへとばされていきました。
たろうは山の中に入って、おふとんをさがしていますがなかなか見つかりません。
そうするうちに、たろうは山の中でおうちからきたみちがわからなくなってしまいました。
「おっかあ、おっかあ、たすけて〜。山の中でまいごになってしまったよ〜」
たろうはまいごになってしまって、なきながらたすけをもとめました。
そのとき、おくのほうから男の人のこえがきこえました。
たろうは、わらにもすがるおもいでおくのほうへ行くと、目の前にかみなりさまがいました。
そして、かみなりさまの右手にはたろうのおふとんをもっていました。
「かみなりさま、ぼくのおふとんをひろってくれてありがとう」
たろうは、かみなりさまにおふとんをひろってくれたことにかんしゃすると、かみなりさまはそのおふとんを見てこういいました。
「おお、さっき山の中でひろったこのおふとんはお前のものか。おふとんを見たら、でっかいねしょんべんでぬれていたし、きいろいシミがいくつもあったけど、もしかしていまだにねしょんべんがなおっていないのか?」
「ぼくはもう10さいになったのに、いつも水のゆめやおしっこのゆめを見てしまうんだ。そして、いつもあさおきたときにでっかいねしょんべんをやってしまうんだ」
たろうは、ねしょんべんでぬれているはらがけをはずかしそうに手でかくしながら、いつもねしょんべんをしてしまうことをいいました。
「ねしょんべんなんてきにするな。きにしなくてもそのうちなおるもんさ」
かみなりさまは、ねしょんべんがなおらないたろうをはげますようにいいました。
「そうそう、お前の名前はなんというんだ?」
「ぼくの名前はたろう。かみなりさま、ぼくは山の中でまいごになってしまったけど、どうすればいいの?」
たろうはかみなりさまにじぶんの名前をいうとともに、じぶんがまいごになったことをいいました。
「もうそろそろ日がくれることだし、夕立ちをふらせるじゅんびをしないとな。そうだ、たろうもわしがのってきたくもにいっしょにのって夕立ちをおてつだいをしてくれないかな?」
「くもの上からじぶんのおうちが見つかるかもしれないし、いっしょにてつだうよ」
たろうはかみなりさまが夕立ちをふらせるためのてつだいをするために、かみなりさまといっしょにくもにのりました。
くもにのったかみなりさまは、さっそくたいこを出しました。
そのたいこはドンドンとたたくことでかみなりがなるようになります。
「ドンドンとたいこをたたくだけでかみなりがなるぞ」
「わ〜い、たいこをたたけばかみなりがなるのか! すごいなあ」
かみなりさまは、たいこをたたきはじめると、すぐにかみなりがなりはじめました。
すると、くもからあめがふりはじめました。
「たろうにもたいこを出すからたたいてみないか?」
「かみなりさま、ありがとう。ぼくもたいこをたたいてみるよ」
たろうもたいこをたたきはじめると、かみなりがよりはげしくなりひびくようになりました。
それにつれて、あめもつよくふるようになりました。たろうはたいこがたたくのがたのしくてたまりません。
そうするうちに、くもの下を見るとたろうのおうちが小さいながらも見えてきました。
たろうはじぶんのおうちがどこにあるのかくもの下を見るためにたいこをたたくのをいったんやめました。
「たろう、たいこをたたかないとくもがうすくなっておちてしまうぞ!」
「えっ?」
かみなりさまはたいこをたたいていないたろうのくもがうすくなっているのを見て、いそいでたいこをたたくようにたろうにいいました。
たろうはあわててたいこをふたたびたたきはじめました。
しかし、たろうののっているくもはさらにうすくなっていきました。
そして、ついにたろうはくもからおちていきました。
たろうは「かみなりさま〜!」とさけびながらおちていきました。
その下には大きないけがあります。たろうは、大きないけがあるのを見てそのままいけにとびこむことにしました。
そして、たろうはじぶんのおしりからいけの中におもいきりとびこみました。
たろうはいけの中にとびこむと「あっ、おしりがつめたい!」とさけびました。
たろうが「おしりがつめたい!」とさけんだとき、たろうはおふとんでねていたのです。
たろうがおもわずさけんだのをきいたおかあさんが、「たろう、どうしたの?」としんぱいしてたろうがねているふとんのそばにやってきました。
おかあさんがたろうのそばにやってくると、たろうははずかしそうなかおをしながらいいました。
「おっかあ、きょうもやっちゃった」
たろうがそういうと、おかあさんはたろうのかけぶとんをめくりました。
すると、たろうのおふとんにはでっかいねしょんべんでぬれていました。
そして、おふとんだけでなく、たろうのはらがけもねしょんべんでベチョベチョにぬれていました。
「きょうのたろうはげんきいっぱいのねしょんべんたろうになっちゃったね。でも、ねしょんべんがなおらなくても、おっかあはたろうがげんきでたのもしい男の子だからだいじょうぶだよ」
おかあさんがやさしくいってくれるので、たろうはしだいにえがおになりました。
たろうがやってしまったねしょんべんぶとんは、いつものようにおにわのものほしにほされました。
たろうのねしょんべんは、まさにげんきいっぱいの男の子らしいねしょんべんです。
しかし、たろうはかみなりさまとのたのしいゆめを見たので、すこしはずかしがりながらもあかるいえがおになっていきました。
おしまい
ねしょんべんたろうの暑中見舞い@
ねしょんべんたろうの暑中見舞いA
この物語は、福娘童話集の読者 しのり様からの投稿作品です。
しのりの童話通り → http://ameblo.jp/shirai-shino
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